-その後-



「・・・コンビニ行かねぇ?」


俺にくっついて座り、教科書を読んでいたが、不意にそう言った。
時計を見てみれば、深夜零時過ぎ。
夕食後、ずっと翌日の予習をしていたため、そろそろ小腹が空いた。
息抜きついでに、散歩がてら夜食を買いに行くのも良いかもしれない。


「・・・あぁ。」


俺は相槌を打ちながら手に持っていたペンをテーブルに置いた。
それとほぼ同時にが部屋を出て行く。


「何してるんだ、お前ら?」


の後を追って部屋を出たところで、兄さんに声をかけられた。
先ほど説教をされたばかりのため、が少し身構えた。


「ちょっとコンビニ行ってくる。」


が答えると、兄さんはニヤリと笑った。


「よし、俺も行こう。」


「「はぁ?」」


俺との声が重なる。


「たまには良いだろ。欲しいもん買ってやるよ。」


ニシシと変な笑い方をした兄さんは、の背を押して階段に向かった。
おそらく、さっき説教をしたことでマイナスになった分を機嫌を取って挽回しようとしているのだろう。


「・・・・まったく・・・」


兄さんは純粋で素直なが可愛くて仕方がないようで、事あるごとにを構いたがる。
稽古の時には厳しい面もあるけれど、普段は歳の離れた弟(特に)を溺愛する優しい兄なのだ。
しかし、当のは鈍いばかりでなく、昔から兄さんより俺のそばに居たがるような奴だった。
まぁ、兄さんはそれに気づいていないみたいだから、俺も言うつもりはないけれど。


「若〜!何やってるんだよ、早く下りて来いよ!!」


物思いにふけるあまり、足を止めていたらしく、階下から呼ぶの声で我に返った。


「あぁ!今行く!!」


俺は急いで階段を下りた。
二人はすでに玄関で待っており、早く早く、とが急かしてくる。


「待たせてごめん。」


二人に声をかけ、靴を履くと、が真っ先に俺の腕を掴んだ。


「早く行こうよ、若。兄さんが何でも買ってくれるって。ね?」


は嬉しそうにそう言って、空いているほうの手で兄さんの腕を掴んだ。


「あぁ!若も好きなの買ってやるぞ。」


そう言った兄さんのヤニ下がった顔を見て、少し心配になった。
のことだから、きっと、目に付いたものをどんどんカゴに放り込んでいくだろう。
その結果、コンビニのレジで青ざめる兄さんの姿が目に浮かんだ。


「まぁ、良いか・・・」


思わずポツリと呟くと、


「え?何?」


が不思議そうに俺の顔を見た。


「何でもない。行くか。」


「おう!」


ワクワクと楽しそうなの姿を見ていると、兄さんが甘やかしてしまう気持ちがわからなくもないな、と思った。




*おわり*




+あとがき+


前回の日吉双子夢(三周年のとき)の続きのようなもの。
主人公は一応、末っ子なので、甘やかされ放題です。