sweet time









『明日ヒマ?』


風呂からあがり、携帯を見ると、“着信あり”と表示されていた。
履歴からかけ直すと、何の前置きもなく、ただ一言、そう言われた。


「明日?・・・・明日は、伊角さんたちと研究会あるからヒマじゃねぇよ。」


カレンダーで日付を確認すると、大きく赤丸がついていて、日付の下に“研究会”と書かれていた。


『・・・また、伊角さんかよ・・・・・バカ義高。』


「しょうがねぇじゃん。これは前から決まってたことなんだからよ。」


『・・・・・じゃあ、今からは?』


「今から?まぁ、別に良いぜ。」


『マジ?てか、もう、アパートの下まで来てるから。』


「何っ!?」


慌てて窓を開けると、下で手を振るの姿があった。


「・・・・・・上がってこいよ、。」


「了解。」


カンカンと階段を上ってくる音が聞こえ、俺は窓を閉めた。


「お邪魔しまーす。」


は楽しそうに、部屋にあがってきた。


「どうしたんだよ、急に来るなんて‥‥」


何の迷いもなく冷蔵庫を開けるに問いかけた。


「どうしたもこうしたも、義高がなかなか会いに来てくれないから、俺がわざわざ来てやったんだろ。恋人放っておくなんてサイテーだよな。」


冷蔵庫の中から缶のコーラを取り出しながら、が言った。
その声は笑っていた。


「それはどうもスイマセンでした。」


手合いやら研究会やらで忙しく、と過ごす時間が無かったことは認めるけど、放ってお いたつもりは無い。


「心がこもってねぇじゃん。」


「そうか?」


「うん。まぁ、良いけど。」


缶のプルタブを起こし、コーラを一気にあおる
じっとその姿を眺めていると、視線に気付いたが俺を見た。


「なに?」


首を傾げて問いかけてくる。


「いや、久し振りに顔見たなぁって思ってさ。」


「・・・・・誰かさんが電話とメールしかくれないからな。」


相変わらず素直じゃないと思う。


「ゴメンな、。」


俺が謝ると、はパチパチと瞬きをした。


「ビックリした。義高が謝るなんて・・・・」


「俺だって謝るときは謝るっての!」


俺は恥ずかしくなって叫ぶように言った。


「ハハハ。それもそうだ。」


が缶をテーブルに置き、俺に近付いてきた。


「ねぇ、久し振りにさ・・・・」


声のトーンを落として、が言うから、俺はドキッとした。


「碁打たねぇ?相手してよ、義高。」


ガクリと全身の力が抜けた。


「・・・・・どしたの?義高。」


床に倒れ込んだ俺を、キョトンとした顔で見下ろしてくるに、ぎこちなくも笑みを返 す。


「何でもないぜ。よしっ、久し振りに打つか!」


気を取り直して、碁盤の用意をする。


「あ、明日の研究会、俺も見てて良い?伊角さんにも会いたいし。」


は何故か、伊角さんがお気に入りらしく、頻繁に名前を出してくる。
実際に二人が顔を合わせたことがあるのは数えるほどでしかないけれど。


「・・・・俺に勝てたら、良いぜ。」


「OK。絶対勝ってやる。」


碁盤を挟み、向かい合って座る。


「「お願いします。」」



――――甘い時間は当分お預けだな、と頭の隅で思った。



*おわり*


+あとがき+


何が書きたかったのかわからない話ですみません。