With you under moonlight
1年前、俺は海上レストラン『バラティエ』にコックとして就職した。
そして、バラティエ副料理長のサンジに恋をした。
サンジは女好きだし、男の俺なんかに興味は無いと思っていた。
だから、自分の気持ちを隠していた。
だけど・・・・
俺がバラティエで働くようになって半年が過ぎたある日の夜。
「・・・・・あのさ、あの・・・・・その、何だ・・・・えっと・・・・あー・・・」
「何だよ?サンジ。」
次の日の仕込みをしていた時、サンジに声をかけられた。
「あー、いや・・・・ちょっと、来てくれるか?」
「うん?わかった。」
調理場の外を顎で示され、俺はサンジと調理場から出た。
そして、閉店後のシンと静まり返った店内を通り、月明かりに照らされた甲板に出た。
「どうかしたのか?」
甲板に出てからも、サンジの様子はおかしく、落ち着かないようだった。
一向に口を開かないサンジに俺は困った。
「ちょっと待ってくれ・・・・」
サンジは右手で俺を制し、ポケットからタバコを取り出してくわえた。
ライターで火をつけようとするが、気が焦っているのか、カチカチと鳴るだけで火がつか
ない。
「大丈夫か?サンジ。俺がつけてやろうか?」
俺はそう言って、サンジの手の中のライターに手を伸ばした。
指が触れるか触れないかの所までたどり着いた瞬間、サンジが弾かれたように手を引いたため、ライターが床へと滑り落ちた。
「・・・・・サンジ?」
サンジの行動に少し傷つきながらも、それを悟られないように言葉を発した。
「わ、ワリィ・・・・」
サンジは動揺したまま謝り、ライターを拾うために屈んだ。
しかし、何故かサンジは屈んでライターを掴んだまま立ち上がらない。
「大丈夫か?お前・・・」
心配になった俺は、屈んでサンジの顔を覗き込んだ。
サンジの顔は真っ赤で、俺と目が合うと飛び退った。
目はずっと合ったままで。
「・・・・何なんだよ、さっきから!!」
俺はとうとう我慢しきれなくなってて、サンジを怒鳴りつけた。
「お前が来てくれって言ったから、俺はここに来たんだ。話があるんならさっさと言え!明日の仕込みはまだ終わってないんだぞ!!言わないんなら、俺は戻る。」
「ま、待ってくれ!!」
俺がサンジの顔を見ながら扉に手をかけると、サンジが慌てた。
「 」
サンジの言葉は、突然吹いた風の音に紛れてしまい、俺の耳には届かなかった。
だけど、じっと見ていた唇の動きでわかってしまった。
す き だ
それは、俺の気のせいではなく、確かにそう動いたんだ。
「・・・・・・?」
俺はサンジの顔を見ることが出来ず、俯いた。
「・・・・・人が折角、言わないって決めたのに・・・・その決意を、簡単に壊しやがって・・・。」
震える声を抑えることが出来ず、両手をきつく握り締めた。
「どういう・・・ことだ?」
サンジが戸惑っているのがわかる。
それと同じくらい、俺は動揺している。
「・・・俺は・・・俺はなぁ、この、バラティエに入ったときからずっと、お前のことが好きだったんだよ!!・・・・・言うつもりは、無かったんだ・・・・なのにお前が、言うから・・・・」
これ以上隠しきれない、と続くはずの言葉は、胸が詰まって言えなくなった。
「・・・・・本当なのか?・・・・」
「ンなこと冗談で言えるかよ!!!少しは考えろ!!!」
改めて訊かれて、俺は恥ずかしくなって当たり散らすように言った。
「・・・そう、だな・・・・俺も、冗談じゃ言えねぇ・・・」
サンジはそう言ったきり、黙り込んでしまった。
俺も何も言えず、ただ視線を床に彷徨わせてばかりいた。
「・・・俺と・・・」
この沈黙を破ったのはサンジだった。
「・・・俺と付き合ってくれ、。」
ハッと顔を上げると、サンジの真剣な眼差しとぶつかった。
そして、俺はこの真剣な瞳に惚れたんだと、思い出した。
「・・・うん。」
幸せを胸いっぱいに感じて、俺は頷いた。
「ありがとう、。」
「ありがとう、サンジ。」
二人同時に呟いて、俺たちは顔を見合わせ笑った。
あれから更に半年が経った今も、俺とサンジは一緒に居る。
「、お前も一緒に行くんだ。あいつらと一緒にグランドラインに入って、オールブルーを探そう。俺たちなら、きっと見つけられるぜ。」
麦わら海賊団に誘われたのはサンジだけ。
だけど、サンジは俺も誘ってくれた。
そして、船長のルフィは気持ちの良いやつで、俺も一緒に行くことを快く受け入れてくれた。
あの夜があったから、俺たちは今も一緒に居られるんだ。
君の夢を叶えるために、俺はずっと側に居ようと決めた。
月明かりの下で君と交わした約束・・・・・
――――伝説の海“オールブルー”を一緒に見つけるんだ。
*おわり*
+あとがき+
中学生か?この2人・・・。