ありがとう
全米オープン予選を通過して、俺は日本に一時帰国した。
手塚部長と決着をつけるために。
高架下のあのテニスコートで、俺は手塚部長と試合をした。
――――結果は、俺の勝ち。
試合を終えて、俺はこの4ヶ月間を思い出した。
学校のこと、テニス部のこと、休日のこと・・・
桃先輩と過ごした時間のこと・・・
「越前!お前やっぱスゲェな!!手塚部長に勝っちまいやがってよ!!!」
駅に向かって歩きながら、なかなか止まらない涙を拭っていると、桃先輩が寄ってきた。
「ももせんぱい・・・・」
顔を見ることが出来なくて、俯いていると、桃先輩が頭を撫でてくれた。
「二度と逢えなくなるわけじゃねぇんだから、もう泣くな。」
ポンポンと頭を軽く叩く優しい手を俺はぎゅっと握った。
「うん・・・」
「絶対、お前に追いつくからな。待っててくれよ?」
「うん・・・」
桃先輩の声がとても優しくて、とても安心する。
しばらく、桃先輩と会えなくなるんだな、そう思ったら寂しくなった。
電話すれば声は聞けるけれど、姿は見れない。
写真があれば姿は見られるけれど、それは過去の姿でしかないし、ただの思い出になってしまう。
桃先輩とのことはまだ思い出じゃないし、現在進行形だと信じてるから。
「越前、全米オープン頑張れよ。俺も全国大会頑張るからよ。」
俺たちには目標があるんだ。
感傷的になっている場合じゃない。
前を向いて進め。
後ろを振り返るな。
場所は違ってもキモチはいつも一緒だ。
そう言われている気がした。
「はい・・・!!」
俺は桃先輩の顔を見上げて返事をした。
涙は止まったよ。
もう泣かないよ。
だから、心配しないで。
先に行って待ってるから。
アナタが追いついてくるのを待ってるから。
そんなメッセージをこめて。
精一杯の「ありがとう」をあなたに・・・
*おわり*
+あとがき+
アニプリ最終回後の妄想(笑)
書いている間のBGMはリョーマの『約束』でした。