賢者の石を探し求め、旅をする俺たち。
少しでもそれらしい噂を聞くと、その情報を頼りに、行き先を決める。
もう、何度ニセの情報を掴まされただろう。 俺もアルもその度に落胆し、諦めようとした。
だが、それでも、俺たちには果たさなければならない目標があるから、その目標を果たすまでは、決して諦めたりしない。
諦めないと、二人で誓ったのだ。


「またダメか・・・・」


賢者の石らしきものがあるという情報を聞き、アルと二人で辺境の村に向かったが、賢者の石どころか、ヒントになるようなものすら無かった。


「何にもなかったね、兄さん。」


その村の駅から乗った列車は、がら空きで、俺とアルは最後尾車両の一番後ろの座席に陣取った。


「あぁ・・・そうだな。」


「・・・・疲れた?寝てて良いよ。」


座席に力なく座る兄さんの姿を見て、ボクはいたたまれない気持ちになった。


「あぁ、そうだな・・・。」


兄さんはそう言って、目を閉じた。
今度こそは、と意気込んでいた分、今回の結果は相当堪えたみたいだ。
でも、きっと、目が覚めた時には、いつもの元気な兄さんに戻っているだろう。


『あー、あー・・・・この列車はたった今、我々が占拠した。命が惜しければ、おとなしくしているんだな。少しでも刃向かう奴には容赦しない。』


突然入ったアナウンスは、次の駅を告げるものでも、車掌さんからの連絡でもなく、列車強盗からの脅迫だった。
バタバタと走ってくる強盗の男たちの足音を聞いて、兄さんが身じろぎした。


「うるせぇな・・・」


兄さんは目を閉じたまま、寝言のようにボソリと言った。
そして、そのまま再び眠りについた。


「何だぁ?この車両は、あの鎧しか居ねぇのか・・・」


ボクたちが乗っている車両内に入ってきた強盗の一人がそう言った。
この車両にはボクと兄さんしか乗っていない。
幸い、眠っている兄さんの姿は、強盗が立っている入り口からは見えないらしい。
このまま気付かないでいてくれたら・・・・そう願った。
いくら兄さんが国家錬金術師で強くても、生身の人間だから、戦えば怪我をする。
無意味な怪我はしてほしくない。


「おい、そこの鎧。そのままおとなしくしてれば命は取らねぇぜ。」


強盗たちは楽しそうに笑った。 そのまま入り口のところに居てくれるかと思ったら、その中の一人がこちらに向かって歩いてきた。


「とりあえず、荷物全部出しな。・・・・・あぁ?テメェ、一人じゃなかったのか?」


近付いてきた男が兄さんの存在に気が付いた。


「ハハハッ、豆すぎて見えなかったぜ。」


男がそう言いながら、ボクたちの荷物に手をかけた、その瞬間。


「だぁれが、豆だっ!!!」


飛び起きた兄さんが男を殴り飛ばした。


「兄さん・・・!」


「何だ、アイツは!?」


それを見た、入り口のところに居た他の男たちが、慌ててこちらに走ってきたけれど、一瞬のうちに全員が吹っ飛んだ。


「・・・・他にも居るのか?」


完全に目が覚めた兄さんは、床で伸びてる男たちを見て、強盗だと気付いたらしい。


「居ると思うけど・・・・・どうするつもり?」


答えは分かっていたけれど、聞かずにはいられなかった。


「もちろん、ブチのめす!!」


兄さんは嬉々として、前の車両に向かった。


「行くぞ、アル!!」


「・・・・うん。」


兄さんには怪我をしてほしくない。
だから、ボクは兄さんが怪我をしないようにサポートをする。

一緒に歩み、同じ目標を持つボクたち。
決して離れてしまわないように・・・・



*おわり*


+あとがき+

エドを大切にするアルが書きたかったのです。