――――悲劇はある日突然やってきた。
その日は雨が降っていた。
「遅いなぁ・・・」
俺は待ち合わせの公園の入り口に座っていた。
突然降り出した雨は、俺をすごく不安にさせた。
「・・・・・・家まで行ってみようかな・・・?」
俺は財布に挟んであった、にもらった住所の紙を出した。
「うん、行ってみよう!!」
俺はその住所の示す場所まで言った。
「え・・・・?ここなの?」
俺はその場所に着き、愕然とした。
何度も住所を確かめた。
「間違い、ない・・・・」
出来れば間違いであって欲しかった。
着いた場所・・・そこは、総合病院だった。
* * * * * * * * * *
マンションか何かの部屋番号だと思っていた数字は病室の号数だった。
ネームプレートには“”の名前だけがあった。
俺はノックして、ドアを開ける。そのドアの向こうは真っ白だった。何もかも、白くて、広い。
広い部屋に、たった一つ置かれているベッドには寝ていた。
「・・・・・・・・・ジロー・・・・・?」
は病室に入ってきたのが俺だと確認すると、ゆっくりと身体を起こした。
「待ち合わせ、行けなくてごめんね。熱が出ちゃって・・・。」
は苦しそうに笑った。
「・・・・・なんで、だまってたの?」
「え?」
「入院してたなんて、知らなかった・・・」
俺は震える声を抑えて言った。
「なんで、言ってくれないの?今までずっと、病院から出てきてたの?」
俺のために、無理して出てきてくれてたの?
そう言おうとして、声が出せなかった。
が、すごく切なそうな顔をしたから。
「・・・・・・・・ごめん・・・ごめんね、ジロー。」
これ以上、責めてはいけないと思った。
「・・・・・・・俺、明日から毎日ここに来ても良い?」
は一瞬ビックリした後、にっこりと微笑んで、
「ありがとう。」
と言った。
――――それから毎日俺は、部活をサボってでも、に会いに行った。
ある日病院へ行くと、の病室がすごく慌しかった。
お医者さんや看護婦さんがバタバタと出入りを繰り返している。
俺はその光景を見て、の容態が悪化したのだと即座に理解した。
「ジローくん、折角来てくれたのにごめんなさいね・・・。」
病室の前のベンチに座っていた、のお母さんが憔悴しきった顔で言った。
「昼頃までは、あの子も元気だったのよ・・・。でも、急に・・・・・っ・・・・」
のお母さんは泣き崩れてしまった。そして、喘ぐように、言葉を続けた。
「・・・・・さっきね、お医者様に・・・・・・・・っ・・・・・覚悟、して、くださっ・・・・って・・・・・・」
その瞬間、俺は頭を思いっきり殴られたかのような衝撃を受けた。
「ど・・・うして・・・・・?」
俺は喉が詰まって、上手く言葉を出せなかった。
「ジロー、っていうのは君かね?」
病室から出てきたお医者さんに呼ばれて、俺は病室の中へ入った。
俺と入れ違いに、お医者さんや看護婦さんが皆出て行った。
* * * * * * * * * *
――――の最期はあっという間の出来事だった。
は、俺の腕の中で逝った。に抱きしめて欲しいと言われて、壊れないようにそっと抱きしめた。
そして、そのままは還らぬ人となった。
俺は今、と最初に会った公園に居る。
あの木の下に座り、空を見上げた。
いつか見た、あの空のように真っ青で・・・。
「たくさんの幸せをありがとう、俺の天使・・・」
そう言った時、の声が聞こえた気がした・・・
Losing those who love, the boy felt sad.
愛する人を失い、少年は悲しみました。
However, the boy did not cry, in order to keep his made promise.
だけど、少年は天使と交わした約束を守るために、泣きませんでした。
"I want you to make a promise. Although I die, it does not cry. "
「約束して欲しい。僕が死んでも泣かないことを。」
It was the language which the angel told lastly to the boy.
それは天使が最期に少年に言った言葉でした。
And the angel said with smile, "It could meet you and was good."
そして、「あなたに出逢えて良かった」と、天使は笑顔で言いました。
The moment the smiling face disappeared, the boy said to only 1 word and the angel.
その笑顔が消えた瞬間、少年はたった一言だけ、天使に言いました。
"I loved you at the moment of meeting you for the first time. That is, it was love at first sight."
「君と初めて出逢った瞬間、俺は君に恋したんだ。つまり、一目惚れだったんだ。」
*end*
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+あとがき+
英文の下をドラッグすると、訳があります。
もち様の代理キリリク「ジロちゃんの初めての○○」でした。
この場合、○の中に入るのは“恋”です。
もう少し、ほんわかした話になるハズでした・・・。