海
幼い頃に出逢って、共に暮らしてきた大切な人。
離れ離れになって、再び逢った時には敵だった人。
君と戦わなければならなかった日々ほど、辛く哀しいものはなかった。
そして、今はまた、共に生きている・・・
「良い天気だな、キラ。一緒に散歩しないか?」
窓際に座るキラの肩に手を置き、声をかける。
「アスラン・・・・・良いね、行こう。」
キラはゆっくりと振り向き、微笑んだ。
「海岸を歩こう。」
「うん。」
俺はキラを連れて、家の前の砂浜へ降りた。
波打ち際まで行き、二人並んで歩く。
長かった戦争が終わり、徐々に平和な日々を取り戻しつつある世界。
キラは時々、何かに怯えたように立ちすくむことがある。
「・・・・海を見てると落ち着くね。」
キラはゆっくりと歩きながら、白く反射する波を見ていた。
「そうだな・・・」
キラの意識は既に海へと移っていた。
「キラ、あそこに座ろう。」
キラの腕を引き、波が届かない位置にある、丁度二人が座れる大きさの流木を指して言うと、キラが無言で頷いた。そして、キラと並んで座り、海を眺めた。
「・・・・・・キラ?」
ふと右肩に重みを感じた。
見てみると、目を閉じて波の音を聴くキラが、俺の肩にもたれかかっていた。
「・・・・こうしてると、とても安心するんだ。」
「・・・そうか。」
俺は膝の上にあるキラの手をそっと握り締めた。
キラも俺の手を握り返し、応えてくれた。
「・・・・ねぇ、アスラン。」
「何だ?」
「・・・・人は海から産まれて、死んだら海へと還っていくんだって、聞いたことがあるんだけど、アスランは信じる?」
キラは閉じていた目を開き、眼前に広がる海を見つめた。
「・・・・・そうだな、俺は信じるよ。」
俺は少し考えてから答えた。
すると、キラはゆっくり立ち上がった。
そして・・・・
「・・・・あの戦争で、亡くなった人たちも皆、ここに居るのかな・・・・」
と、俺を見下ろして言った。
「居るさ。きっと・・・」
俺が頷くと、キラは嬉しそうに笑った。
久しぶりに見たキラの本当の笑顔に、ドキンと心臓が跳ねた。
「そろそろ帰ろう、アスラン。ラクスたちが待ってるよ。」
キラは笑顔のまま俺に手を差し延べた。
「あぁ。帰ろう。」
俺はキラの手を取り、立ち上がった。
そしてそのまま、来た道を戻った。
少しでも早く、キラが元気を取り戻してくれるのを俺は願っている。
いつかまた、昔のように笑い合える日々を待ち望んでいる。
この海が、俺たちの『希望』なのかもしれない・・・
*おわり*
+あとがき+
何だかよくわからない話ですみません。