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君と出会ってから、幾度も季節が変わった。

過ごした時間は、僕の大切な宝物。





「手塚。ドリンクの準備も終わったし、洗濯してくるね。」


僕はカゴいっぱいに入ったタオルとかの汚れ物を抱えて、手塚に声をかけた。


「あぁ。・・・・・。誰か手伝いを寄越したほうがいいか?」


手塚は一度僕を振り返って、返事をした。


「ううん、僕一人で大丈夫だよ。洗濯機回すだけだしさ。」


「そうか。じゃあ、気をつけるんだぞ。」


「手塚ってば心配性だなぁ。大丈夫だって!」


僕は手を振って部室裏の洗濯機に向かった。



洗濯機を回している間、僕は地べたに座って空を見上げた。


「いーい天気〜。風が気持ち良いなぁ・・・」


洗濯機に凭れ掛かって、備品のチェック表を見ながら、買い物リストを作ることにしたが、背中から伝わってくる振動が心地よくて、ついウトウトしてしまった。



「・・・・。起きろ、。」


体を揺さぶられて、僕は目を開けた。


「・・・・・あれ?手塚?あ、洗濯機止まった?」


僕は目を擦って、立ち上がろうとしたけれど、手塚に制されて、立ち上がれなかった。


「何?あ、洗濯物干し終わってる・・・何で?」


周りを良く見てみると、洗濯物が全部干してあって、1年生部員が数人居た。


「もしかして、皆がやってくれたの?うわ!!ごめん!!ありがとね。」


僕は慌てて皆にお礼を言った。


「お前たちはもう戻って良いぞ。」


手塚は1年生たちをテニスコートに帰し、僕の隣に腰をおろした。


「手塚は戻らなくていいの?」


「・・・・・あぁ。少しくらいは良いだろう。」


「ふぅん。」


「・・・俺が此処に居るのは不満なのか?」


「ううん。そんなはず無いじゃん。2人きりになる時間ができて嬉しいよ。」


「そうか。」


手塚が視線を僕から風ではためく洗濯物へと移した。


「ありがとね、手塚。」


「・・・・・何がだ?」


「洗濯物。僕が眠ってたからわざわざ1年生たち呼んでやらせたんでしょ?」


「・・・・・あぁ。最近疲れてるみたいだったからな。休ませてやろうと思ったんだ。」


「あははっ。僕のことより手塚は自分のこと心配しなよ。クマができてるよ。寝てないんだろ?勉強に部活、生徒会のことまでやってるんじゃ寝る時間もなくなるんだろうけど、少しは寝なきゃ、いつか体壊すよ。」


僕は手塚のメガネを取って、目の下を示した。


「そうだな。じゃあ、少し休ませてもらうか。」


そう言って手塚は僕に凭れ掛かり、目を閉じた。
しばらくすると、規則正しい寝息が聞こえてきた。


「さて、と・・・僕はこの続きでも書くかな。」


手塚の寝息を聞きながら、僕は買い物リストの続きを書いた。



今、この場所には僕と手塚しか居ない。


心地よい風が吹き、木の葉がざわめき 、愛する人の静かな寝息と共に

僕はこの瞬間を思い出のページに刻み込んだ・・・




*おわり*





+あとがき+



名前変換少なすぎ・・・


思い出を刻むという意味で使ってみました。
主人公の口調が不二っぽい・・・。

この主人公はいずれまた他の話で出てくると思います。多分ね。