声
よく晴れた日曜日。
珍しく部活が休みになったから、俺は侑士の家に遊びに来た。
「侑士〜。」
俺はベッドにうつ伏せで転がったまま、侑士を呼んだ。
「ん〜、何や?岳人。」
テレビを見ている侑士は声だけで返事をした。
「・・・・・・・・・何でもねぇよ。」
侑士はさっきからずっと、レンタルビデオ屋で借りてきたラブロマンス系の映画のDVDをずっと見ている。
俺が遊びに来たというのに、侑士は相手にしてくれず、映画に夢中だ。
俺はずっと、ビデオを見ている侑士を見ている。
一体、何本借りてきたというのだろうか。当然、1本や2本なんかじゃない。
「よく飽きねぇよな・・・・」
俺はそのままゴロンと寝返りを打って仰向けになった。
手足を伸ばすと、俺が読み散らかした雑誌やマンガに当たる。
俺はソレに構わず、思い切り体を伸ばした。
――――俺たちって付き合ってるんだよな?
何度その言葉を口に出そうと思ったことだろう。
言ったところで返ってくる返事はわかっているくせに。
その質問で何か変わるわけでもない。
だから俺は言えずにいる。
「あーぁ。つまんねぇ・・・折角良い天気なのになぁ・・・」
窓越しに見える青空を見上げて、独り言を言う。
こんな青空の下を2人で歩きたいと思う。
だけど、当の本人は架空の恋愛話に夢中だ。
俺と恋愛するのより楽しいのかな・・・。
そこまで考えて、寂しくなった。
泣きそうになるのを堪えて、俺は枕を抱きしめた。
「・・・・・・・・・くと・・・・・がくと・・・・・岳人?起きんのか?岳人。」
優しい声がして、俺はふと目を開けた。
「あぁ、起きたんか?」
「ゆ・・・・・うし・・・?」
目を開けて真っ先に見えたのは、心配そうに覗き込む侑士の顔だった。
「どないしたん?怖い夢でも見とったんか?」
侑士はそう言って、指で俺の目元を拭った。
「え?」
「泣きながら寝とったんやで、自分。」
侑士は俺の涙で濡れた指先を見せて言った。
「泣いてた?何で?」
「それは俺が聞きたいんやって。何かあったんか?」
俺の問いかけに侑士は苦笑して答えた。
「・・・・・・何でもない。」
俺は起き上がって、侑士が見ていただろうテレビ画面を見て答えた。
テレビには、侑士が見ていた映画が流れたままだった。
見ている途中に、俺の異変に気付いてくれたんだと思う。
そして、
「ヘヘッ。」
思わず笑みが零れた。
「ん?何や?」
侑士はテレビを切って、俺の隣に座った。
「何でもない。映画は?見なくて良いの?」
「ええよ。また今度見るわ。何したい?」
「何か話してよ。侑士の声が聞きたい。」
俺が言うと、侑士は驚いた顔をした。
「そんなんでえぇんか?外は晴れとるんやで?さっき、何か言うとったやろ?」
「え?聞こえてたの?」
独り言で言ったことが聞こえていたのに驚いた。
「聞こえとったで。岳人の声は何処に居ってもすぐわかる。」
侑士は俺を抱き寄せて言った。
「俺も。侑士の声スゲェ好きだから、すぐわかる。ずっと聞いてたいくらい。」
侑士の胸元に凭れて、俺は言った。
「ほな、今日は何か話そか。」
「うん。何か話して、侑士。」
窓から吹き込む風に当たりながら、大好きな人の声を聞いていた。
*おわり*
+あとがき+
ラブロマンス好きということでしたので・・・
相手にされなくて拗ねるがっくんを書きたかったのです。
相変わらず似非関西弁ですいません。。。(>△<)
そして、毎度のことながらまとまってないです。