眠り姫
「
。?起きて、。」
声の主、滝萩之助のチームメイトである芥川慈郎と共に丸くなって眠る少年は。
ちなみに、彼らが居る場所は屋上である。
「え?何?・・・・・・・ばか?」
滝はが唇だけで語った言葉を読み取り口にした。
「・・・・・あほ?」
なおも続く言葉を順番に読み取った。
「・・・・・・ひとでなし?」
一瞬にして滝の周りの空気が凍ってひび割れ砕け散った。
「素直に“起こすな”って言えば良いでしょ。」
滝は少し呆れた。
「・・・じゃあ、起こすな。」
今度は、はっきりと声に出して自身が言った。
「はいはい。じゃあ、教室戻ろうか。」
滝は強引にの腕を引っ張り起こした。
「痛い痛い痛いっ!!!痛いってば、ばか萩!!!」
は痛みに顔をしかめた。
「目、覚めたでしょ。」
滝は平然と言った。
「ったく・・・・・ジロー。起きろ。跡部に怒られるぞ。」
「ん〜・・・・・」
ジローが目を擦りながら体を起こした。
「ちゃんおんぶー・・・・」
「イ・ヤ。お前なんかをおぶったら俺が潰れるだろ。」
は可愛い顔をしているくせに、言うことはキツい。
この小柄で可愛らしい外見に騙され、言い寄ってくる者が多い。男であれ女であれ、がモテることは事実だ。
しかし、大抵はの毒舌にやられて退散していく。
一応、恋人である滝にとってそれはとても都合のよいことであり、に言い寄ってくる者を追い払う必要が無いのだから。
その点では、の性格に感謝している。が、こういう場合のには手を焼いている。
昼寝をしているには決して近寄らないことが利口な手段だろう。
その時その時で違うのだが、運が悪いと、逆切れしたに殴られるのだ。
今回みたいに暴言だけで済むならまだ良いが、最悪の場合、暴言と暴力のダブルパンチで再起不能にされる。
「そろそろ予鈴がなるよ、、ジロー。」
滝は二人を立ち上がらせ、校舎へと向かった。
「萩。」
ジローの背中を押していた滝はに呼び止められ振り返った。
ちゅっ
その一瞬のうちに滝の唇に触れたのはの唇。
「オヒメサマはオウジサマのキスで目覚めました。なんてね。」
ヘヘッと笑って、は逃げるように校舎の中へと走っていった。
「やられた・・・・・」
滝は呆然と立ち尽くした。
「いーなぁ。俺も跡部にちゅうしてもらおーっと。」
ジローはその隙に滝から離れ、1人で屋上から出て行った。
「まったく・・・には困ったもんだよ。」
滝は空を見上げ、1人呟いた。
*おわり*
+あとがき+
純愛というか何と言うか・・・甘すぎる。