着信音
幸村が入院してから、俺は電話が鳴るのが怖くなった。
電話は、良い報せだけを運んでくれるわけじゃないから・・・・
「あ、。いらっしゃい。」
幸村はいつも笑顔で俺を迎えてくれる。
「・・・・・真田も来てたんだ。やっぱ俺、帰る。」
幸村のベッドの横に真田が立ってるのを見て、俺は今入ったドアから再び病室から出た。
「え?待ってよ、。」
幸村に呼び止められたが、俺はそのまま病室の外に出た。
俺は、病院という所が嫌いだ。
消毒のにおいも、真っ白な空間も、病院に関するものは全て嫌いだ。
嫌な思い出しかないから・・・
―――――2年前。
学校で授業を受けていると、突然携帯が鳴った。
普段はまったく鳴ることのない時間帯に携帯が鳴ったのだ。
先生には注意されるし、周りからは笑われるし、散々だった。
でも、電話に出ないわけにはいかなかったから、廊下に出て電話に出た。
『!?』
「母さん?今、授業中だったんだけど・・・・・・え?」
『お兄ちゃんが・・・・・・がね、死んだの・・・・』
ふっと目の前が暗くなった。
携帯が手からすり抜けて落ちたのにさえ気づかなかった。
「・・・兄貴が?ウソだろ・・・・?」
俺は無意識のうちに走り出していた。
後ろから先生が何か叫んでいたが、俺は構わず走り続けた。
病院に着き、兄貴の病室に向かった。
「母さん!!!」
病室の前の廊下に居る母さんに駆け寄った。
「・・・・・」
母さんは憔悴しきった顔で俺を見た。
目は真っ赤に腫れ上がっている。
「あ、兄貴は?」
病室を見ると、医者や看護婦たちが居て、その輪の中には白い布を被せられた兄貴が横たわっていた。
「マジ、かよ・・・」
顔を確認しなくても、あれが兄貴だとわかった。
兄貴は昔から、入院ばかりしていた。
体が弱くて、すぐ熱を出すし、風邪を引いたら必ずと言って良いほど肺炎になる。
それでも、俺は優しい兄貴が大好きだった。
何故なら、俺の家族は、母さんと兄貴と俺だけの3人家族だ。
3人ともとても仲が良い。
兄さんが元気なときは3人でよく出かけるのが俺たちの決まりだった。
その中の1人・・・兄貴が居なくなった。
俺と母さんの2人だけになってしまった。
母さんはそのまま寝込み、俺は1ヶ月くらい学校に行けなかった。
それ以来、俺は病院が駄目になった。
だから、正直、幸村の見舞いに行くのもツライ。
でも、せめて元気な姿をこの目で見るだけでもしたいと思った。
後悔しないためにも。
「。」
病院のロビーを抜けたところで、幸村の声がした。
「幸村!?いつの間に・・・」
「そんなことより、折角来たのにすぐ帰っちゃうなんて酷いんじゃない?」
幸村は少し怒っているらしい。
「真田が来てるんだから、良いじゃん。俺は帰る。」
「やだよ。俺はに会いたいんだから、が帰っちゃったら困る。」
「・・・・・・・・何でだよ?」
「わかってるくせに・・・・」
唇に何かが触れた。
一瞬後、キスされたんだと気付く。
「が好きだからだよ。」
「っ!!!人前で何すんだよ!?」
俺は周りの視線が気になった。
だけど、幸村はまったく気にしていない様子だ。
「じゃあ、戻ろうか。が嫌なら、真田には帰ってもらうよ。」
幸村に手を引かれ、俺は幸村の病室へと連行された。
言った通り、幸村は真田を病室から追い出した。
俺は真田に申し訳ないと思いながらも、幸村の意向に従った。
*おわり*
+あとがき+
お題の「着信音」は何処行った?
主人公は電話が鳴るのが嫌い、というところで勘弁してください・・・
またもや中途半端でごめんなさい。
真田(名前だけですが)→幸村×主人公デス。