誓い
※注 この話は、テニプリOVA5巻を観て、出来た妄想です。
OVAを観ていない方の為に補足しておきます。
*時期→全国大会 青学VS氷帝戦 前日
*場所→遊園地
*状況→敷地内にあるテーブルにて作戦会議(他の氷帝メンバーはいない。)
「・・・ここで明日の作戦会議しようって言ったのはお前の方だろっ!!」
テーブルに両手をついて身を乗り出し、顔を真っ赤にして喚く向日さんが可愛くて、つい意地悪をしてしまいたくなる。
あまりやりすぎると、怒って収拾がつかなくなるから、加減をしなければならないけれど。
「まぁ・・・そうですね。とりあえず、落ち着いてくださいよ。」
俺がそう言うと、向日さんは少し納得がいかないようで、眉をひそめ渋々といった風に椅子に座り直した。
辺りを見れば、カップルか子ども連れしかおらず、居心地が悪いのは確かだ。
「つーか、何でここを選んだんだよ?作戦会議なら、ファミレスとか喫茶店とか他にもいろいろあるだろ?」
散々、喚いて喉が渇いたらしい向日さんが、ジュースを一口飲んだ。
そして、ストローを弄びながら俺を見る。
「・・・・・何でも何も、作戦会議なんてただの口実ですよ。」
鈍いにも程があるのではないだろうか。まさか、本気で作戦会議だなんて信じていたのか?
俺の性格からして、こんな賑やかで落ち着かない場所で、作戦会議なんて大事なことをするはずがない、と、ここに来た時点で気づいても良いのに。
「は?何だソレ?」
きょとんとする向日さん。
本当に気づいていなかったらしい。
「最近ずっと練習ばかりしていたから、少しくらい息抜きしても良いんじゃないかと思ったんですよ。・・・・2人でゆっくりする時間も無かったですしね。」
「なっ、ばっ・・・・それならそうと、初めっから言えよ!」
俺の言葉を聞いて、向日さんは一段と顔を赤くして喚き、
「何だよ・・・・わざわざ、そんな小細工しなくたって、逃げたりしねーよ。」
そう言って、脱力して椅子にもたれ掛かった。
「さて、と・・・・・どこから回りましょうか?」
今日は、とことんあなたに付き合いますよ。と告げると、向日さんは嬉しそうな顔をした。
「最初は当然、バンジーだろっ!」
そして、ピョンと跳ぶように椅子から立ち上がり、バンジージャンプの方へ走っていく。
俺はゆっくりとその後を追った。
* * * * * * * * * *
あっという間に時間は過ぎ、とうとう日が暮れ始めた。
制服のままのため、これ以上はいられない。
名残惜しそうな向日さんをつれて、最後に観覧車に乗った。
向日さんは黙り込んだまま窓の外を眺めている。
徐々に高度が上がっていくのを体で感じた。
「あ・・・」
頂上付近に来て、向日さんがポツリとこぼした声に顔を上げると、窓の外には綺麗な夕焼け空が広がっていた。
「スッゲ・・・・」
オレンジ色から徐々に濃紺へと移っていくグラデーションがとても綺麗だ。
「・・・・向日さん?」
コテンと俺の肩に頭を乗せてきた。
どうかしたのかと思い、見下ろすと、向日さんが顔を上げた。
「絶対勝とうな、日吉。」
そして、そう言ってニィッと笑った。
「・・・はい。必ず勝ちましょう。」
俺は頷き、その唇に軽くキスをした。
向日さんは一瞬呆然とし、だけどすぐに、俺の首に腕を回してきて、もう一度キスをした。
――――そして、俺たちは・・・甘い余韻にひたりながら、明日の試合に思いを馳せた。
*おわり*
+あとがき+
OVA5巻を観てから、いったいどれくらいの時間が過ぎたのでしょう・・・。
もう6巻も出て、ヒヨガクの試合も終わっちゃってますねぇ・・・。
甘々なヒヨガク。いかがでしょうか。
私的には、気に入ってます。