Happy day!!



季節が夏から秋へと移り変わり、空気がさわやかになった。
毎朝起きるたびに、秋だなぁと実感する。


「・・・今日も過ごしやすそうだな。」


いつになくスッキリとした目覚めを感じ、ベッドから降りてカーテンと窓をを開いた。
その瞬間、涼しい風が吹きぬけていくのを肌で感じ、ここ数日続いていた雨の影響も無くカラッと晴れ上がった空を見上げる。
この空をアイツも見ているだろうか・・・そんなことを考えて少し幸せな気持ちになった。


「さあてと・・・仕度するかな・・・」


今日の予定を頭の中で反芻しながら、タンスの引き出しを開き、今日着ていく服を出す。
俺は女の子じゃないし、着ていく服にこだわりなんてものは無いけれど、今日は特別な日だから、いつも以上に気を配ろうと思っている。
選びに選びまくって決めた服を着て、財布や携帯など必要最低限の物を持って部屋を出る。
洗面を済ませて朝食を取り、待ち合わせの時間までまだいくらか時間があるからと、リビングでテレビを見ていた。


♪〜♪♪〜♪〜♪〜


不意にシャツのポケットの中で携帯が鳴り出し、その着メロが特定の人物を示すものであると分かり、名前も確認することなく通話ボタンを押した。


「もしもし、英二?」


『おーいしっ!?ゴメンッ!!!寝坊した!!!今起きたよぉ〜・・・』


かなり慌てた様子で捲くし立てたかと思うと、ふにゃリと力が抜けた声でそう言ったのは、今日、待ち合わせをしている相手、菊丸英二だ。


「そうか。じゃあ、俺が今から英二の家に行くから、ゆっくり準備すれば良いよ。」


『うぅ〜・・・大石、ホントゴメンにゃ〜・・・』


泣きそうな声でそう言って、通話が切れた。


「まったく、しょうがない奴だな・・・」


ポツリと呟くものの、嫌な気持ちはまったく無くて、ただただ愛しさがこみ上げてきた。
通話の切れた携帯で現在の時刻を確認し、英二の家に行くまでにかかる時間を簡単に計算した。
ここから英二の家までは、バスで20分ほどだ。


「・・・丁度良いな。」


俺は頭の中にあるバスの時刻表を確認して、家を出た。






* * * * * * * * * *






英二の家に迎えに行くと、英二の仕度は終わっていて、俺たちはすぐバスに乗って駅に向かい、電車で水族館へ向かった。
水族館は人が多かったが、水槽を見るのに支障が出るほどではなく、俺たちはじっくり観賞することが出来た。
メインプールでのイルカショーを見終え、昼食を取るために館内の喫茶店へと入った。


「うわぁ〜水槽だぁ〜!!スッゲェ!!キレ〜!!!」


座席を仕切るようにアクアリウムの大きな水槽が置かれていて、まるで水中にいるかのような空間だった。
水槽に囲まれているのを見て、英二が嬉しそうに歓声を上げている。


「スゴイなぁ〜。大石の部屋にあるのもキレイだから好きだけど、やっぱりたくさんあると迫力あるよなぁ〜!!」


座席についてからもソワソワと落ち着かず、キョロキョロと水槽を見渡している。
注文したものが来るまで、英二は水槽から目を離さないかもしれないな。


「あ、なぁなぁ、おーいし。あの魚は何て名前?オレンジ色のやつ!」


英二が近くの水槽を示してそう言った。


「んー・・・あれは、ホタル・テトラかな。ウチにはいないやつだね。」


「へぇ〜、ホタル・テトラっていうんだ。キレイな色してるよなぁ〜。あ、じゃあ、あっちのは?」


英二は次から次へと色んな魚を示しては、俺に名前を尋ねるという行動をくり返した。
キラキラと目を輝かせて、あちこちへ視線を移している姿がとても可愛いと思った。





* * * * * * * * * *






食事を済ませると、今度はデザートを何にするかで迷っているようだった。


「何を迷ってるんだ?」


俺が聞くと、英二は眉をハの字にして俺を上目遣いで見上げてきた。


「う〜・・・チョコバナナパフェにするか、ダブルベリーパフェにするか迷ってるんだにゃぁ〜・・・大石はどっちがイイと思う??」


両方を食べたいと思っている英二に対して、俺がどちらか一つを答えたところで、英二が納得しないのはわかっている。
ならば方法は一つしかないわけで・・・


「じゃあ、俺がチョコバナナパフェを頼んで、英二はダブルベリーパフェを頼んで、二人で半分こするっていうのはどうだろう?」


毎度のように同じ提案をしているが、英二はその度にとても嬉しそうな顔をする。
英二の喜ぶ顔を見るためなら、どんな手間でも惜しまない。


「うん!!そうしよう!!」


今回も例に漏れず、英二はとても嬉しそうに笑って頷いた。
そして、嬉々としてウェイトレスに注文をした。
程なくして二つのパフェがテーブルに届き、即座に英二は手をつけ、幸せそうにスプーンを口に運んでいる。


「あ、大石、アーン♪」


そう言って差し出されたスプーンを何の迷いもなく口に含むと、英二が満足そうに笑った。
そして、何かを期待するかのようにキラキラとした瞳で俺を見ていた。


「・・・じゃあ、今度は英二の番だな。・・・はい、アーン。」


俺は自分のスプーンでチョコバナナパフェをすくい、英二の口元に運んだ。


「ムフフ・・・んまーい♪♪」


英二は始終幸せそうにパフェを食べていた。
時々、チラッと上目遣いで俺の顔を見ては嬉しそうに微笑み、それを見た俺までも嬉しくなった。




あっという間に食べ終わり、英二は物足りなさそうにしていたが、やがて楽しそうに、土産物売り場を見に行こうと言った。
売り場内をぐるっと見て回り、英二と俺はお揃いでイルカのついたボールペンを買い合って交換した。


「楽しかった〜!!また来ようね、大石!!」


「あぁ、そうだな。また来よう。」


帰り道、コッソリと手を繋いで歩いた。
手のひらから伝わるぬくもりを絶対に手放したくない、そう思った。



*おわり*


+あとがき+

何だかとても甘い内容になってしまいましたね・・・。

私としては久しぶりの大菊なんですが、今現在サイトには大菊が一つも無いんですよね・・・
一応、一押しカップルベスト5に入るんで・・・頑張って増やそうかな。