ある日曜日の出来事
冬のある日曜日、一応、恋人である日吉と映画を観に行く約束をした。
午前10時に駅前で待ち合わせということで、間に合うように家を出てきたは良いけれど、思ったより早く着いてしまった。
「・・・・・・・・しょうがない。」
近くに時間が潰せるような店もないため、俺は花壇の縁に腰を下ろして、日吉が来るのを待つことにした。
「カーノジョ!今、ヒマ?俺たちと遊ばない?」
暇潰しに携帯でゲームをやっていると、頭上から調子の良い声が聞こえた。
「・・・・・・・・・・・・・。」
俺は聞こえないふりをして、ゲームを続けた。
しばらくゴチャゴチャ言っていたけど、諦めたのか、ナンパ男たちは去って行った。
「なぁなぁ、彼女。さっきからずっとここにいるけど、一人なんだよね?俺とカラオケ行こうよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・。」
今度は違う奴が来た。
ていうか、さっきの奴と言い、今の奴と言い、“彼女”って・・・
(俺のどこが女に見えるって言うんだ!?)
イラッとしながらも、相手にするのも面倒だからと放っておいた。
「・・・・ちぇっ。」
男は舌打ちをして去って行った。
「ねぇ、彼女!俺たちと映画でも観に行かない?奢っちゃうよ〜。」
今度は4人の男の集団だった。
(・・・・・・ウゼェな。)
馴れ馴れしく肩とか頭に触れてくるのが鬱陶しい。
思い切り振り払うと、男たちは逆上して、掴みかかってきた。
「ちょーっと可愛いからって生意気なんじゃねぇの?大人しくついて来ればいいんだぜ?」
その中の一人に羽交い絞めにされ、身動きが取れなくなった。
周りの通行人や待ち合わせをしているらしき人たちは遠巻きに俺たちを見ているだけだった。
(見てねぇで誰か助けろっての!!クソッ・・・・)
体格が違いすぎて、力では敵わないのが悔しい。
「何やってるんだ!!」
聞き慣れた怒鳴り声が聞こえたと思ったら、目の前にいた男が吹っ飛んだ。
そして、俺を押さえつけていた男が驚いて力を抜いた隙に、俺は男の腕から抜け出した。
「、大丈夫か?」
抜け出した俺に近寄ってきたのは、やはり、俺の待ち人である日吉だった。
吹っ飛ばされた男が体勢を整えて立ち上がり、他の3人も一斉にこちらに向かってくる。
――――バキィッ!!!
俺は目の前にいた日吉を渾身の力を込めて殴り飛ばした。
「来んのが遅ぇんだよ、テメェッ!!!」
罵声を浴びせながら、持っていた携帯を倒れ込んだ日吉の顔目掛けて投げつけた。
携帯は日吉の頬に当たって、地面に落ちて大破した。
ナンパしてきた4人や周りの野次馬達が一斉に動きを止める。
「お前が遅い所為で、変な奴らは寄ってくるわ、こんな馬鹿共に絡まれるわで最悪だったんだぞっ!!わかってんのか、あぁ!?」
「・・・・すまなかった。」
日吉は壊れた携帯を拾い上げ、立ち上がった。
「クソッ、気分悪ぃ。映画は止めだ!!行くぞ馬鹿日吉。」
日吉を殴っただけじゃ、気が晴れない。
当然と言えば当然なんだが、こんな馬鹿共のために時間を割くのも、労力を使うのも嫌だ。
とにかく、この場から離れようと思って、日吉の腕を掴んだ。
「お前、俺の携帯弁償しろよ。お前が来るの遅かった所為なんだからな。」
「わかってる・・・・今から買いに行くか?」
「あぁ、当然だ。」
俺たちは野次馬の間を抜け、携帯ショップへ向かった。
携帯を買ってもらい、日吉と一緒に俺の家に帰る頃には、苛々も大分収まっていた。
「なあ、日吉。俺のどこが女に見えるんだ?」
ナンパしてきた奴らが全員、俺を女と間違えていたことが不思議で仕方がないため、日吉に訊いてみることにした。
「・・・・は黙っていれば、どこからどう見ても美少女だな。」
この一言で、日吉の傷が増えたのは言うまでもないだろう・・・。
*おわり*
+あとがき+
ほのぼのデートが書きたかったんですが・・・・一体、どこで間違えたのやら・・・
俺様主人公(?)・・・・・楽しかったです。一応、受なんですがね・・・
理不尽な理屈をつけて携帯を弁償させられる日吉がちょっと不憫かも・・・なんて思うんですが、ここは愛の力ということで。
ていうか、日吉の喋り方とかがニセモノですみません。