伝えられない想い
誰よりも好きだった。
だけど、僕の想いは彼に伝えられない。
伝えてしまったら、今の関係が壊れてしまうから・・・。
ずっと近くで見てきた僕だから、彼が誰を見ていて、誰を想っているのか、すぐわかった。
「おはよ、隆。」
家を出ると、向かいの寿司屋から1つ上の幼馴染が出てくるところだった。
「あ、。おはよう。」
隆はいつも優しい笑顔を向けてくれる。
僕はそんな隆のことが好きだ。
隆は僕の想いにはまったく気づいていないけれど。
「一緒に学校行こう、隆。」
「うん、いいよ。」
隆が頷き、僕は凄く嬉しかった。
「・・・来週からテストだね。隆、また数学教えてよ。僕、今回もホント駄目なんだよね。因数分解って何なのさ!って感じ。」
ずっと隆に言おうと思ってたことを言ってみると、隆は少し考えて、
「それは良いけど、既に不二とも約束してるんだ。今日からテスト週間入ったから、部活もないし、放課後、一緒にやる?」
そう言った。
僕はその返事を聞いて、出遅れたと思った。
「・・・不二先輩がいるなら、僕、今回は自分で勉強するよ。ごめんね。」
不二先輩と隆はつい最近、付き合い始めた。
二人が仲良くしているところに平気で居られるほど僕は強くない。
しかも、隆の優しさに甘えて、一緒にやるなんて言ったら、不二先輩に恨まれそうだ。
「やっぱり、先行くね!」
泣きそうになり、僕は顔を伏せて隆から離れた。
「!?」
隆が戸惑っている声が聞こえた。
* * * * * * * * * *
極力、隆と顔を合わせないように気をつけながら1日を過ごした。
「、お客さんよ。」
家に帰り、自室にこもっていると、お母さんに呼ばれた。
階下へ降りていくと、玄関に隆が居た。
「・・・・どうしたの?」
震える声を抑えながら問いかけると、
「今朝、の様子おかしかったから気になって・・・。」
隆は苦笑しながらそう言った。
「そう、なんだ。ごめん。不二先輩とテスト勉強するんじゃなかったの?」
隆の目をまっすぐ見つめられなくて、目を伏せた。
「・・・不二とのテスト勉強、断ったから、の数学見てあげるよ。」
僕は自分の耳を疑った。
信じられない気持ちで、隆を見上げた。
「何で!?」
「昔からの約束だっただろ?テスト前はの勉強を見てあげるって。」
少し悲しげな顔の隆を見て、僕は胸が痛んだ。
本当は隆は不二先輩と一緒にテスト勉強がしたいと思っている。
僕はいつになっても、隆のお荷物でしかない・・・
「・・・それは、確かにそうだけど。でも、今、隆が優先するべき人は僕じゃないだろ?不二先輩と一緒にテスト勉強しなよ。僕のことは気にしなくていいから・・・」
言いながら、涙が出てきた。
「?ど、どうしたんだ?」
僕の涙を見て、隆がうろたえた。
その姿は昔から変わっていない。
「ごめん、泣くつもりなんてなかったんだけど・・・」
僕は涙を拭って、隆の顔を見上げた。
無理やり笑顔を作った。
「不二先輩のところ、行きなよ。僕、友達に数学教えてもらう約束したからさ。」
嘘をつくのはキライだけど、隆は不二先輩と一緒に居たいのだから、僕は退くしかない。
「・・・・。わかった。でも、どうしてもわからない時は、いつでも言ってくれていいからね。」
隆はそう言って僕の頭を撫でた。
隆の優しくて大きな掌が、僕は大好きだ。
だけど、その手はもう、不二先輩のものになってしまった。
もう二度と、隆に甘えることは許されない。
幼い頃とは違うのだ。
「・・・・・好きだよ、隆・・・」
もう誰も居なくなった玄関で小さく呟いた。
そして、その場に蹲り、思い切り泣いた。
隆のことを想って泣くのは、これで最後にしよう。
そう誓って・・・
*終わり*
+あとがき+
初タカさんBL夢がこんな暗い話でいいのだろうか。
イメージソングは、タカさんのアルバム内の曲「写真」です。
歌詞はあんまり関係ないかも?