心の花




+3+



―――ピーンポーン


風呂から上がると、ちょうど玄関のチャイムが鳴った。


「はーい?」


インターホンで応対するのが面倒で、直接玄関のドアを開けた。


「侑士?」


門の前に侑士が立っていて、走ってきたのか、わずかに息が上がっている。


「あんなぁ、今晩泊めてくれへん?」


そう言った侑士の真剣な眼差しに、ドキッとした。


「・・・・・良いけど、急に何だよ?つーか、来るんなら連絡くらいしろよな。」


何だろう・・・いつもと雰囲気が違う気がする。


「お邪魔します。」


「誰もいねぇから、そんな畏まるなよ。」


俺の両親はしょっちゅう海外出張をしていて、滅多に帰ってこないため、ほとんど一人暮らし状態だ。


「・・・・・シャワー借りてもええ?走ったから汗かいてもうたわ。」


「は?え?うん・・・?」


侑士が浴室に向かうのを見送りながら、玄関の鍵をかけ、今までにない違和感をひしひしと感じた。


「・・・何だ?あいつ・・・」


どこか緊張した様子だったように思えた。
そして、眼差しが、まるで獲物を追う獣のようにギラついていたように見えた。



それから20分ほどで侑士が風呂から出てきた。


「侑士、何か飲むだろ?」


キッチンで冷蔵庫を開けながら侑士に声をかける。


「・・・・侑士?」


なかなか返事が返ってこなくて、不思議に思って振り返ると、侑士は腰にバスタオルを巻いただけの格好ですぐ傍にいた。


「お前、着替えは・・・・・っ!?」


どうしたんだ、と続くはずの言葉が出てこなかった。
何故なら、ぎゅっと強く抱きしめられたから。


「んっ・・・」


貪るような口付けに、頭がクラクラとした。
そのまま流されてしまいそうになり、ハッとする。


「・・・・・っ!!」


「うわっ!?」


我に帰った俺は渾身の力を込めて侑士を突き飛ばした。


「お前っ!!!不意打ちなんて卑怯じゃねぇか!!そういうつもりなんだったら、初めっから言えよ馬鹿!!!」


尻餅をつく格好で呆然としている侑士を見下ろし、怒鳴る。
心臓がバクバクと鳴り、全身が熱い。


「・・・・・・すまん。嫌やったか?」


理性が戻ってきたのか、侑士は申し訳なさそうにそう言った。


「・・・・・・・・・嫌じゃねぇよ。第一、嫌だったら、初めから家に泊めねぇし。けど、前もって言って欲しかったのは本音。俺にも心の準備ってもんがあるんだからな。」


俺は侑士の前にしゃがんで、軽く口付けた。


「・・・・・ほら、部屋行くぞ。」


そして、侑士の手を引いて立ち上がらせ、キッチンやリビングの明かりを消して2階へ上がった。


「・・・・・・・ほんまにええんか?」


俺のベッドに並んで座ると、侑士が恐る恐ると言った風にそう言った。


「・・・・あぁ。つーか、改めて確認すんじゃねぇよ。」


俺は緊張しているのを隠しながら、侑士を小突いた。


・・・・俺、もう止まらへんで?」


侑士はそう言って、俺をベッドに優しく倒した。


「・・・・・俺だって待ってたんだからな。」


俺は口付けながら、侑士の首に腕を回して目を閉じた。




――――甘い甘い夜の帳に、愛の花が咲き乱れる




*終わり*




+あとがき+

中途半端なところですが、終わらせます。
これ以上は無理です・・・(汗)
タイトルはあんまり意味がないかも。