ハッピー☆クリスマス




「岳人!!早く早く!!」


今日は12月24日ということで、跡部の家でクリスマスパーティーがある。
誰よりもこのクリスマスパーティーを楽しみにしているは、いつになく張り切っており、今朝は日が昇る前に起き出し、それ以来ずっと、こうして俺を急かし続けている。
普段、早起きなんて滅多にしないくせに。


「まだ時間あるだろ?跡部んとこの車が迎えに来てくれるんだし、急ぐことねーじゃん。」


昼を過ぎ、俺たちはのペットのアリエスたちの散歩をすることになった。
跡部たちとの約束が午後5時のため、いつもの夕方の散歩へ行けないからだ。
時間まではまだ全然余裕があり、いつものペースで歩いても充分間に合う。


「そーゆー問題じゃないの!!あ、居た!!」


は誰かを見つけたらしく、フォルとデルを抱え、走り出した。
呆然としている俺をアリエスが引っ張っていく。


「ちょ、何だよ、!?待てって!!」


足元を走るアリエスを踏まないように気をつけながらのあとを追い、の目的の人物を見つけて納得した。
たどり着いた公園にはの想い人である乾貞治がいたのだ。


(乾と待ち合わせか・・・跡部には見せらんねぇな・・・)


が乾のことを好きだと、跡部以外の全員が気づいており、跡部がのことを好きだということも、以外が気づいていた。
乾はきっとのことを好きだろうけれど、決定的なことは何も言っていないみたいだし、うかつに周りに気づかれるような真似はしないため、確証を得られないでいた。


「さだちょ、待たせてゴメンね。岳人が遅くて・・・」


が公園のベンチに座っている乾の前で足を止める。


「いや、良いよ。そんなに待ってないから。」


乾がに小さく微笑みかけ、の頬がうっすらと赤く染まった。
もったいぶらずにさっさと告白して付き合っちゃえば良いのに・・・・二人を見るたびにいつもそう思う。
大事な双子の弟が男と付き合うことに抵抗が無いとは言えないが、の嬉しそうな顔を見ると、まあいいか、という気にさせられる。


「雪降らないねぇ・・・」


は乾の隣に腰を下ろし、空を見上げて呟いた。


「そうだな。・・・・その代わりと言ったら、おこがましいかもしれないが・・・にクリスマスプレゼントを用意したんだ。」


乾はそう言って、15センチ四方の箱を差し出した。


「プレゼント?ありがとう!!」


は満面の笑みで箱を受け取った。


「開けて良い?」


「ああ、どうぞ。」


乾が頷くと、はゆっくりと箱を開け、中を見て手を止めた。


「これ、スノードーム?」


は箱を膝に置き、両手でそっと中身を取り出した。


「・・・もしかして、手作りなのか?」


ガラス球の中に飾られている人形やツリーが市販のものにしては少し不恰好な気がして、俺は思わずそう問いかけた。


「・・・・あぁ、まぁ・・・」


乾は少し照れくさそうに眼鏡を直し、そっぽを向いた。


「さだちょの手作りなの!?」


ほど器用じゃないから、下手だけどね。」


「そんなこと無いよ、すごく上手だよ!!さだちょが作ってくれたなんて嬉しいなぁ〜。」


は本当に嬉しそうにスノードームを眺めた。


「あ、じゃあ今度は僕からさだちょにプレゼント。」


は背負っていたリュックから紙袋を出し、乾に渡した。


「開けて開けて!」


に急かされながらも、乾は丁寧に袋を開けた。


「このスノードームには負けちゃうけど、僕の手作りだよ。」


紙袋から出てきたのは、マフラーと手作りの携帯ストラップだった。
あのストラップには見覚えがあった。
確か、今朝、が自分の携帯につけていたものと同じだった。
ということは、は乾には内緒でお揃いにしたということだろう。
そこまでするんなら告白しろよ、と言いそうになるが、すんでで止めた。


「ありがとう、。大事にするよ。」


乾が礼を言うと、が笑った。
傍から見ている俺としては、二人はバカップルでしかないと思う。
だけど、当事者自身がお互いの気持ちにまったく気づいていない。
何とかならないだろうかと思案する。
「なぁ、乾。今日暇だったら俺らと一緒に来いよ。跡部の家でクリスマスパーティーやるんだ。」


宍戸たちにも協力してもらおうと思い、乾を誘うことにした。
跡部は怒るだろうけれど。


「あ、良いね、それ!!おいでよ、さだちょ!!」


が嬉しそうに同意すると、乾は少し考えた後に承諾した。


「もう少ししたら、けぇごの家の車が僕の家に迎えに来てくれるから、それに乗っていくんだよ。」


は乾からのプレゼントを箱に戻し、立ち上がった。
すると、足元で戯れていたフォルとデルがの肩に乗り、地面に伏せていたアリエスも立ち上がった。


「よーし、アリィたちの散歩を早く終わらせて帰ろう!!さだちょ、岳人、早く早く〜!!」


が走り出すのと同時にアリエスが走り、俺はまた引っ張られた。
こういうときのは本当に速くて、俺でさえもなかなか追いつけない。
そして、何とか追いつくころには、乾もの隣にいて、が幸せそうに笑っていた。



*終わり*


+memo+


移転前にやっていたシリーズ『Sky High』の主人公です。
ふと思いついたので出してみました。
岳人視点で統一したら、少し難しかった・・・(苦笑)