君が居る場所
+00.別れ+
『・・・・本当に、行くのか?』
薄暗い空の下、はらはらと白い雪が舞っている。
『あぁ。』
目の前にいる人が、笑う。
『・・・・もう、帰ってこないのか?』
幾度となく訊いた言葉。
答えは変わらないと知っているのに。
『あぁ。』
苦笑しながら頷く。
『そうか・・・』
もう、それ以上、何も言えない自分。
もっと言いたい言葉があるのに。
伝えたい言葉が、あるのに・・・
“今は、伝えてはいけない”
と、本能がそう告げる。
伝えてしまったら、その瞬間、駄目になる。
自分も、目の前にいる人も。
だから、まだ、伝えてはならないのだと・・・
『またな。』
そう言って、扉の向こうへ消えていった。
帰ってくるつもりがないのに、“またな”と言う。
いつかまた、どこかで会おうと願う。
いつかまた、会えると信じて待とう。
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+memo+
誰と誰の会話なのかはまだ秘密です。