君が居る場所



+13.過去の花火+



浦原商店での勉強会が終わり、俺はいつもの仲間達と待ち合わせをした。
言いだしっぺはケイゴで、俺たちの目的は花火大会・・・だったはずなのだが、何故か午後3時に集合させられて、くだらないことを喋りながら花火大会の会場である小野瀬川に向かった。


「なんか喋りながら歩いてるだけでけっこー時間経ってんな。」


日が暮れてきた空を見上げて俺が言うと、


「ハハハッ!そーだな!」


隣を歩くが、笑顔で同意した。


「え―――なんか、もうこのへんでいいんじゃん?」


たつきが言うと、ケイゴの変なスイッチが入った。
ギャーギャーと騒ぐケイゴを俺たちは少し離れたところで見物することにした。
すると、遠くから親父と遊子と夏梨が上機嫌で走ってきて、俺はその3人に突き飛ばされて土手を転がり落ちる羽目になった。
やたらとテンションが高い遊子と夏梨は酔っ払ってるし、親父はいつもどおりアホなことを言っているし・・・いちいちツッこんでいたらキリがない。
親父がケイゴたちを誘い、一斉に駆け出した。


「いつも楽しいなぁ、お前んちの家族は。」


が楽しそうにそう言った。


「ウルセエだけだよ。・・・・・俺たちも行くか。」


「あぁ。早く行かないともっとうるさそうだ。」


俺たちも走って親父たちを追いかけた。






* * * * * * * * * *






親父が場所取りをしていたところに着くと同時に花火が上がった。


「うわぁ、ホントに特等席だな!」


間近に上がる花火を見て、が嬉しそうに言う。


「あぁ・・・」


薄暗がりの中、花火が照らすの横顔がとても綺麗だった。


「・・・・・・・・なぁ、?」


しばらく無言で花火を見ながら、俺は時々の顔を盗み見ていた。
そして、意を決して声をかける。


「ん?」


が花火から目を離し、俺を見る。


「俺・・・俺さ。お前のことが・・・好きなんだ・・・」


俺がそう言うのと同時に、一際大きな花火が上がった。
がきょとんとして俺を見ている。


「・・・・え?悪ぃ、花火の音で聞こえなかった。もういっぺん言ってくれるか?」


間の悪い花火の所為で、俺の告白はの耳に届かなかった。


「・・・・・・いや、やっぱいい。また今度にするわ。」


俺はそう言って、再び花火を見上げた。
ちらっと盗み見たは、何故かとても寂しそうな顔をして、空を見上げていた。






* * * * * * * * * *






一護たちと花火大会へ行くことになり、みんなと待ち合わせをした。
一護の親父さんが場所取りをした特等席へ行き、みんなで花火を楽しんだ。


しばらく花火を見ながら、俺は密かに懐かしい想いを抱いていた。
遠い昔に見た花火を・・・。


『あのさ、・・・』


そう・・あの時、俺はアイツに・・・・


「・・・・・・・・なぁ、?」


不意に一護に呼ばれて、意識が過去から現実へと呼び戻された。


「ん?」


俺は花火から一護へと視線を移した。


「俺・・・俺さ。お前のことが・・・―――――――だ・・・」


一護が口を開くのと同時に、一際大きな花火が上がり、一護の言葉は花火の音で掻き消された。


「・・・・え?悪ぃ、花火の音で聞こえなかった。もういっぺん言ってくれるか?」


一護が纏っている雰囲気と過去の記憶が重なる。
今、何を言われたのかを即座に理解するが、俺は嘘をつくことで回避した。


「・・・・・・いや、やっぱいい。また今度にするわ。」


一護はそう言って、花火を見上げた。


(ごめん・・・ごめんな、一護・・・俺はお前の気持ちに答えられねぇんだ・・・)


俺は心の中で一護に謝った。
そして・・・・・思い出すのはやっぱり・・・・・


『あのさ、・・・俺、お前が好きだ。』


あの時の、恥ずかしそうに頬を赤く染めているあの姿が忘れられない。
遠い昔に置いてきたはずの、胸が痛くなるほどの愛しい気持ちとともに、今もまだ、俺の中に残っているんだ。





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+memo+

一護の告白。
てか、ベタなことやってスミマセン・・・