君が居る場所
+16.意外な姿+
井上とたちがジ丹坊の治療をしている姿を、少し離れた場所から見ていた。
井上が盾舜六花を使って治療する脇で、はジ丹坊の上に上り、丹念に傷口を調べていた。
あんな風に必死なを見たことが無い。
はいつだって余裕綽々で、面倒ごとには首を突っ込まない主義だったはずだ。
「死神連中ん中にはイバリくさってヤな奴も多いけど、ジ丹坊さんは流魂街の出身でね。おれらにすごく優しかったんだ。」
俺の隣に一人の男が来て、そう話し始めた。
「あんたはジ丹坊さんのために、あの市丸ギンに向かってった。だからきっといい人だ。」
「・・・・・俺は何もしてねぇよ。アイツに傷をつけたのは、だ。」
俺は言いながら、再びに目を向けた。
俺が知るは、ふざけた一面もあるが、基本的には真面目な奴で、わざわざ自分から喧嘩を売ったり、攻撃を仕掛けたりするような奴ではなかった。
喧嘩に巻き込まれても平然としていて、相手の隙を見て逃げるか、相手をするにしても、のらりくらりと攻撃をかわしつつ、相手の急所を外し、だが確実に一撃で仕留めていくような奴だった。
それなのに・・・・・先ほどの、市丸ギンに対峙したはまるで別人のように思えた。
相手を射殺してしまいそうなほど怒りに満ちた眼差しで相手を見据えたまま、手にした武器を何の躊躇いも無く急所目掛けて突きつけ、本気で殺してしまおうとする姿なんて見たことが無かった。
「・・・・・あーぁ、わっかんねぇ!!・・・・わかんねぇよ、アイツが・・・」
考え込んでいても仕方が無い。
今はまだ、訊いてはいけない気がした。
* * * * * * * * * *
日が暮れても、井上とはまったく休憩せずにジ丹坊の治療に専念していた。
俺は二人分のお茶を淹れた湯飲みを持って外へ出た。
「・・・さ!あと一息!がんばるぞーっ」
井上が袖を捲って気合を入れている。
は相変わらず終始無言で、ジ丹坊の上に座り、じっと傷口を見つめていた。
時々、の手がジ丹坊の傷口に触れる。
「お疲れ」
湯飲みの一つを井上の頬に当てたら、井上が物凄くビックリして叫んだ。
「そ・・・そろそろ中で休んだ方がいいんじゃねえか?」
家の中を示して言うと、井上は無理やり笑顔を作って大丈夫だと言った。
「・・・・倒れるぞオマエ」
俺がそう言うと、数人の男たちが飛び出してきて、井上に礼を言いつつ、休憩するように薦め、井上が家の中へと入っていった。
「・・・!お前もいい加減休めよ!!」
湯飲みを持った手を上に挙げ、に言ったが、
「・・・・いや、俺はまだ平気だから。お前は中にいろよ。茶もいらない。」
はチラッと俺を見てそう言い、すぐにジ丹坊の傷口に目を戻した。
いつものような笑顔はまったく無かった。
「・・・・そう、か?無理するんじゃねえぞ。」
俺はそう言って、家の中に戻った。
「揃ったな。」
家の中に入ると同時に、囲炉裏のところにいた夜一さんが俺を振り返ってそう言った。
そして、今後の行動についての話を聞かされた。
には聞かさなくていいのかと夜一さんに訊いたら、は放っておけば良いと言われた。
あとでにも話しに行こうかと考えていたら、ガンジュとかいう男が乱入してきた。
結局、その所為で、と落ち着いて話せる様子じゃなくなってしまった。
* * * * * * * * * *
夜が明け、ジ丹坊の怪我の容態が少し落ち着いてきた。
あとは流魂街の奴らに任せても大丈夫そうだな、そう思いながら大きく息を吐き出した。
そして、近くにいた数人を呼び寄せ、後を任せた。
「・・・・え?もう出発?」
一晩中、ジ丹坊に付きっきりだったため、体を動かすとあらゆるところの骨が鳴る。
軽くストレッチをしながら、ジ丹坊の上から降りた。
そこで、夜一に声をかけられて、今日の予定を知った。
「そうじゃ。・・・・・空鶴のところへ行く。お主が疲れておるようじゃったら、多少、出発を遅らせても良いんじゃがな。」
「空鶴ね。久しぶりに聞くなぁ、その名前。オッケ、俺はいつでも良いぜ。いざとなったら、空鶴ん家で寝るわ。」
そう答えたところで、家の中が騒がしいことに気づいた。
どうやら、一護が何やらワガママを言っているらしく、それを聞いてキレた夜一が一護の顔面を引っかいた。
「何やってるんだよ、一護。早く行こうぜ!」
俺は渋る一護を引っ張って、半ば引きずるように家の外へと連れ出した。
「・・・・・・、お前は・・・」
一護はわずかに眉を寄せて俺を見た。
「何だ?」
「・・・いや、やっぱ何でもねぇ。」
そして、一護はゆっくりと首を横に振った。
→next
+memo+
主人公とジ丹坊は仲良し設定。