君が居る場所



+24.夢から醒めて+



――――懐かしい、夢を見た。



「あん?何だこりゃ?」


机の上に一枚の紙が置いてあった。


“今晩九時に隊舎西修練場の屋根の上に来てください”


紙を読み、松本の机の上に積まれた書類を見る。


「・・・・つーか・・・仕事もしねえでどこ行きやがったんだあいつは?」






 * * * *






夜になり、紙に書いてあった通りに隊舎西修練場の屋根に上がる。


「あ!来た来た、たいちょーっ!!」


屋根の上に座り、手を振る松本の向こう側に藍染と雛森がいた。


「こんなとこに呼び出して、何の用だ」


松本に近づき、マフラーで口元を隠しながらそう問いかける。


「やだなあ、誕生日でしょ、隊長」



――――ヒュルルルルルルル・・・



「あ、ほら」



――――ドォ・・・ン



大きな音と共に、空に一輪の花が咲く。


「オツなもんでしょ、冬の花火ってのも。ほんとは雪でも降ってればもっと最高だったんですけど」


松本が微笑みながらそう言った。


「・・・・・・・・・・・・・・・・それじゃ寒みーよ馬鹿野郎」


次から次へと上がる花火を見て、ふと頭の隅に何かが過ぎる。
それは遠い昔にこの場所で見た光景だった。


『・・・・・何でわざわざ屋根に上るんだよ馬鹿野郎・・・・・』


真夜中になると必ずと言って良いほど屋根に上るアイツ。
ちょっと訳ありで人前に姿を出すわけにはいかないなんて言っておきながら、屋根の上の目立つ場所に座る馬鹿な奴。


『・・・・・迎えに来てくれる気がするんだ・・・・』


その言葉が何を意味するのかはまったくわからない。
だけど、誰かを呼んでいるような気がした。


「・・・・どうしたんですか?隊長?」


松本が不思議そうに俺を見上げた。


「・・・・いや、何でもない・・・」


首を振り、空を見上げる。


「おめでとう、日番谷くん」


不意に藍染がそう言った。
流魂街出身の俺達にとって、誕生日なんてものは有って無いようなもの。
本当かどうかは問題じゃないと藍染は言う。
自分の信頼する人が告げた日をそのまま信じること、自分の誕生日を知っていることが幸せなのだと。
そんな話を聞きながら俺は遠い昔の記憶に思いを馳せる。


『・・・・・・・・・・・俺は、お前が好きだ。』


この場所で、いつの日か俺がアイツに言った言葉。



――――ドォ・・・ン



一際大きな花火が上がり、暗闇を明るく照らす。


『・・・・・・俺のことが、好き・・・?』


驚きに目を見開いた、アイツの姿をじっと見つめて。


『・・・・・・・・・・・俺、お前が好きだ。』


何度も何度も繰り返し伝えた。
受け入れてもらおうなんて思ってはいなかった。




―――忘れられない、何よりも大切な時間・・・・・






* * * * * * * * * *






「・・・・・・ん・・・・」


目を開けると、見慣れた自室の天井が見えた。


「・・・・・・・ここは、俺の部屋・・・?」


あたりはもう暗くなっていた。
ふと脇腹の辺りに違和感を覚えて、ゆっくり体を起こした。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・?」


ここにいるはずのない人物が、俺の布団の上に突っ伏して眠っていた。





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+memo+

冬獅郎の片思い、です。たぶん・・・。