君が居る場所



+07.回想+



「なんで・・・黒崎くん、あんなピリピリしてるんだろ・・・?」


いつになくテンションの高い一護を見て織姫が言った。


「織姫、やっぱアンタすごいわ。あたしはあれに気付くのに3年かかったもん。」


たつきが静かに言い、席を立つ。


「たつきちゃん・・・?」


「もし一護に急ぎの用があるなら今日のうちに済ませときな・・・あいつ―――・・・・明日休みだから。」


そう言ったたつきはどこか悲しげだった。






* * * * * * * * * *






翌日、俺と織姫はたつきに呼ばれてたつきの家へ行った。


「・・・・・・なんで俺まで呼ばれたんだろう・・・?」


何の迷いもなくたつきの部屋に入れられて、俺は入り口に突っ立ったままぼやいた。


「・・・、一護と仲良いでしょ。アンタにも知っておいて欲しいことがあんのよ。良いから座って。」


たつきはそう言って、織姫と俺にベッドへ座れと示した。
さすがに女の子のベッドに座るわけにはいかないからと丁重に断って、床に腰を下ろした。
織姫が座った隣にたつきが座り、


「お母さんが死んだの。・・・あいつが9歳の時にね。」


そう言った。


「ヘラヘラしてて、お母さんにベッタリの甘ったれで・・・でも死んだ。次の日からあいつ学校休んでさ、何してんのかと思って捜してみたら、お母さんの死んだ川原にいんの。学校のカバン背負って、朝から晩までお母さんさがすみたいにウロウロウロウロ・・・つかれたらソコにしゃがみ込んで、しばらくしたら立ちあがってまたウロウロ。毎日毎日朝から晩まで・・・見てらんなかったな・・・・・・・・・・・あの時の一護・・・・・・」


泣きそうに眉を顰めてたつきは続ける。
一護の母親が亡くなっているというのは、初めて一護の家へ遊びに行ったときに、一護本人から聞いていて知っていた。
しかし、詳しいことは聞いていない。


いや、聞けなかったんだ・・・・あんな風に苦しそうな表情をしている一護からは・・・。






* * * * * * * * * *






ザアァァァァァ――


雨の音が聞こえ、俺と織姫が窓の外に視線を向けた。


「雨ふってきた」


「うわぁ・・・サイアク・・・」


「ウッソ!?昼間あんだけ晴れてたのに?」


たつきが窓に近寄る。


「俺帰るわ・・・洗濯物干しっぱなしなんだよ・・・」


この様子じゃ洗濯し直しだ・・・。


「あ、じゃあ私も帰るよ。たつきちゃん傘かしてくれる?」


「いいけど・・・泊まってけば?あの家、雨ふると寒いっしょ?」


「あ、あそこ追い出されたの」


織姫があっさりとそう言い放つと、たつきは


「お・・・追い出されたあ!?なにそれ初耳だよ!じゃあ、あんた今どこ住んでんの!?」


と喚き、織姫は嬉しそうに寝袋を取り出した。


「野宿っすか!?」


織姫はホクホクとした顔で寝袋のファスナーを下ろし、裏地を出す。


「しかもリバーシブル――――!!?・・・って別に寝袋がリバーシブルでも全然お得でも何でもないよっ!?そんな「リバーシブルだから2倍よく眠れます」みたいなカオされても!!」


「なんつって。追い出されたのはホントだけど、新居見つかるまではホテル暮らしなのでしたー。」


「なんだ・・・ビックリさせないでよ。ていうかあんたそんなしょうもないネタのために寝袋持ち歩いてたの?」


「・・・ええどうせ、しょうもないネタですよ・・・あたしもね、寝袋持ち歩き始めて一週間ぐらいで「あ・こりゃダメかも」とは思ったんすよ・・・まあ実際、たつきちゃんのツッコミのテンションの割に全然おもしろくなんなかったしね・・・」


織姫はそうぼやいた。


「い・・・いや、大丈夫よ織姫!ちゃんと面白かったって!!ていうか、その「あたしのツッコミのせいで面白くなかった」みたいな言い方やめてくれる!?」


織姫とたつきのコントみたいなやり取りを見ていたら、沈んだ気持ちが浮上していくような気がした。






たつきの家からの帰り道、途中まで方向が同じだからと織姫と並んで歩いた。


「・・・・・・ねぇ、くん・・・」


「うん?」


「・・・あたしが、黒崎くんに感じてた安心感とかのわけが、すこしだけ分かったような気がするの・・・」


悲しそうに空を見上げる織姫。


「・・・・・・そうか・・・」


俺は小さく呟くことしかできなかった。


(一護・・・・)


一つ、また一つと心の中に何かが芽生えていく・・・そんな気がした。





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+memo+

何気に主人公は女子陣(特にたつきと織姫)とも仲が良いです。
恋愛感情はありません。というか、男として見られていません(笑)