君が居る場所
+09.突然変異+
「終わったァ―――!!そして死んだア―――!!!」
テストが終わり、啓吾が泣きながら机に突っ伏した。
「ダメだったみたいだね。まぁぼくもだけど。」
水色が答案用紙を集めながら啓吾に声をかける。
「気にすんな!期末テストなんて人生においてさしたる意味を持たねぇ!」
帰る仕度の終えた一護がそう言い、啓吾がウザいくらいにテンションを上げる。
「・・・まァ、そういうセリフは結果が出てから言った方がいいね。」
一護に生涯の友だとか何とかって言っている啓吾に、呆れ顔の水色が言う。
「?どういうイミだよ、水色?」
「はい。これ一護の中間の時の順位表。」
そう言って水色が差し出した紙を見て啓吾は真っ青な顔をして叫び、騒ぎ出す。
しまいには牛乳瓶の底の様なメガネまで出し始め、一護に殴られている。
啓吾がのた打ち回っているのを横目に水色が感心したように一護と話していた。
そして、一護はきちんと勉強する理由を話した。
* * * * * * * * * *
「ほぉ――――っ。今回も無事、我々の中に50位以内に入るなどという裏切り者は出なかったようだ!!」
「おっしゃるとおりです隊長!」
啓吾と水色が順位表を見ながら何やら芝居めいたことをやっているのを一護と俺は遠目に眺めていた。
そして、順位表の中に一護の名前を見つけると、
「見るな小島隊員!!現実は常に残酷にして俗悪!!純真なる我々の心を汚すものでしかないのだから!!」
「はい、浅野隊長!!」
などと現実逃避をした。
「一護のアホーおまえなんか遊ぶ時もうさそってやんねーかんなー!!」
啓吾が小学生みたいなことをやり、
「なーチャド??お前らは一緒に遊ぼうな〜。入ってねーもんな〜。」
そう言って俺とチャドを見る。
チャドは無言で順位表の中の自分の名前を指差した。
「え・・・」
啓吾と水色の目が点になった。
「ちなみに俺はあそこな。」
俺はそう言って4位のところにある自分の名前を示した。
ついでに言うと、3位の織姫とは1点差だった。
「おおおお・・・おまえらなんかあっちいけ!!おまえらがそんな悪魔だとは思わなかった!!」
啓吾はそう言って泣きながら走っていき、水色がその後を追いかける。
「・・・・・・・・騒々しい奴だなホントに。」
俺は呆れてそう言った。
* * * * * * * * * *
一護が何やら用があるとかで、さっさと一人で帰っていってしまい、俺は一人で帰路に着いた。
「あー、ヒマだなぁ・・・」
ブツブツと独り言を呟きながら歩く。
「・・・・・・・・・・・つーか、コソコソ隠れてねぇで出て来いよ、啓吾。」
足を止め、振り返ると、電信柱の陰からそっと啓吾が顔をのぞかせた。
「・・・・バレてた?」
「バレバレだっての。何か俺に言いたいことあるんじゃねぇの?」
「えーっと・・・・・・俺と一緒に帰りませんか?」
「・・・・・一緒に帰るも何も、俺んちもう目の前だけど?」
俺がそう言って、目の前にあるアパートを指差すと、
「はっ!!そーじゃねぇか!!どうりで見覚えがある道だと・・・・」
啓吾は大袈裟に驚いて、ヘナヘナと崩れ落ちた。
相変わらずアホだな、コイツは・・・。
「ハハハッ!何も言わずにコソコソついてくるからだろ。ま、上がってけば?」
俺がそう言うと、啓吾は顔を真っ赤にして喜んだ。
「やった!!つーか、一護いなくても上がって良いのか!?」
「は?何でそこで一護が出て来るんだよ・・・別に一護いなくても俺がいるときならいつでも来て良いんだぜ?」
「いや、だってよぅ・・・・俺、おまけみたいなもんじゃねーの?」
「何でそうなる・・・・?」
不意に周りの空気が一変した。
「・・・・・・・まさか・・・」
嫌な予感がする。
と、そのとき、虚の気配がした。
「・・・・・っ!!啓吾!お前は先に中に入ってろ!ちょっと用事思い出した。俺が帰るまで何があっても家から出るんじゃねぇぞ!!」
俺は一息にそう言いながら部屋の鍵を啓吾に渡し、虚の気配を感じた方へ走った。
そして、今までにない異変を目の当たりにした。
「・・・なッ!?虚が増えている!?」
次々と虚の気配が現れ、町中が虚で埋め尽くされているかのように思えた。
俺は自分の持っている霊力を封じているため、自分から関わらない限りは虚に見つかることはない。
しかし、このまま放っておくわけにはいかない。
「チッ・・・・」
諦めにも似た気持ちで、俺は霊力の一部を解放した。
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+memo+
サブタイトルがなかなか決まらなくて悩みました。
観音寺の話は書かない予定です。