冷たい
季節は冬になり、日が暮れるのが早くなった。
中学校生活も残りわずかだ。
「はぁ・・・寒っ。」
寒さに凍える手に息を吐きかけながら、空を見上げた。
雲ひとつ無い真っ黒な空。月は出ていなかった。
「星がきれいだなぁ。」
冬の空気は澄んでいて、星が見えやすい。
俺が今いる場所は、街灯が少ない。
だから、星がきれいに見えるというわけだ。
ここは俺のお気に入りの場所。
「会いたいな・・・」
ふと浮かんだのは俺の最愛の恋人の顔。
ポケットから携帯を取り出し、画面を見る。
「あれ、もうこんな時間なんだ。」
画面の時計は、22時37分を指していた。
家を出たときは確か、20時になる前だったはず。
家からここまで来るのに、徒歩で30分はかかるから、ここに着いたのは20時30分ごろ。
それでも、2時間はここに居たことになる。
「まぁ、良いか。」
(この時間だとアイツは風呂かな・・・?)
そんなことを思いながら、メールを打つ。
『 今から会える? 』
たった一言、想いを込めて送る。
「早く返事くれよ、幸村。」
俺は白い息を吐きながら、空に向かって呟いた。
* * * * * * * * * *
15分くらい経って、幸村から返事が来た。
『 こんな時間に?どうしたんだ? 』
想像通りの内容で、思わず笑みが零れた。
『 星がきれいだからお前と一緒に見たいと思ったんだよ 』
今度はすぐに返事が返ってきた。
『 そうか。今どこにいるんだ? 』
俺もすぐに返事を返した。
『 お前ん家の近くの公園 』
『 わかった、すぐ行く 』
この公園は幸村の家から徒歩5分くらいだ。
今から逢えると思うと、寒ささえも忘れられる気がした。
「!」
思ったより早く、幸村は公園に現れた。
「幸村、早かったな。」
「走ったからね。それより、、いつからここに居たんだ?」
走ったと言う割には、息一つ乱していない。
さすがはテニス部元部長だな。
「2時間半前・・・・?」
「そんなに!?風邪を引いてしまうじゃないか!!」
幸村はビックリして、らしくも無く大きな声を上げた。
「ちょっと散歩のつもりが、気づいたらこんな時間だったんだよ。」
「だからって・・・・この時期にそんな無茶しなくてもいいだろう?」
心配そうに、だけどちょっと怒ったように幸村は言った。
「ほら、こんなに冷たくなってるじゃないか。」
幸村は俺の手を握り、そう言った。
「うん、ごめん。」
しょんぼりと項垂れると、ふわっと甘い香りが鼻をくすぐった。
全身を包み込むように、幸村に抱きしめられている。
「こんなに体も冷えて・・・・家に来なよ。」
「え?」
「もう時間も遅いし、ここからの家まで30分かかるだろ?危ないから、今夜は家に泊まっていけば良い。幸い明日は休みだからね。」
俺を抱きしめたまま幸村はそう言った。
「・・・・うん。サンキュ。」
俺が頷くと、幸村は嬉しそうに笑った。
「じゃあ、帰ろうか。」
「おう。」
俺も笑顔で返事をして、幸村の手を握った。
すると幸村もぎゅっと握り返してくれた。
そんな些細なことも嬉しくて、寒さなんてどこかへ飛んでいった。
たまにはこんな風に人目も気にせず触れ合うのも良い。
そう思った。
*おわり*
+あとがき+
幸村との絡みが少なすぎる・・・。
わけのわからない内容でごめんなさい。
ちなみに、主人公は常盤NO.10の主人公と一緒です。
わかりにくいんですが・・・