夕焼け空の下で





夏が終わり、徐々に秋へと変化している9月。
空が澄み渡るほど青く、涼しい風が心地よい。
そんな9月も半分近くが過ぎ、向日さんの誕生日である12日が来た。


「・・・・・・一体、何処へ行っているんだ・・・?」


俺は朝からずっと向日さんの姿を探している。
教室も部室も、向日さんが居そうな所は全て探したというのに、向日さんは見つからない。
今日は休みなのかと思ったが、向日さんのクラスメートに聞いたら、学校には 来ていて、授業もちゃんと受けていると言うのだ。 休み時間の度に何処かへ行っているということなのだろう。
まるで、俺から逃げるかのように。


「何がしたいんだ、あの人は・・・。」


特に喧嘩した覚えもないため、向日さんが俺から逃げる理由が分からない。
誕生日が近付くにつれて、向日さんが浮かれていたのは知っている。
だから、誕生日を祝われるのが嫌というわけではないだろう。
メールしても返事がなく、電話も留守録になる。
向日さんのクラスメートに何度も声をかけているから、俺が向日さんを探していることは 本人にも伝わっているはずなのに、何の連絡もないということは、避けられているとしか考えられない。


「・・・・部活行くか。」


放課後になっても、向日さんに会えず、連絡もとれない。
仕方なく俺は、部活に向かった。
練習が終わったら、向日さんの家に行くことに決めて。






* * * * * * * * * *






練習が終わり、挨拶もそこそこに部室へ戻った。
部誌を書き、手早く着替えを済ます。


「鳳、後は任せたぞ。」


部室を出る際に、副部長の鳳に声をかけた。


「あ、うん。わかった。また明日ね。」


「あぁ。」


部室を後にし、足早に校門へと向かう。


「あそこに居るのは・・・」


遠くに見える校門の門柱にもたれかかるようにポツンと座る小さな人影を見つけた。
歩く速度が徐々に速くなり、最後は走っていた。


「向日さん!!!」


走りながら彼の名を呼ぶと、向日さんがゆっくりと俺の方に顔を向けた。


「よぉ、日吉。部活お疲れ。」


ニッコリと笑い、向日さんが言った。


「アンタ、今まで一体、何処に居たんですか?」


俺は向日さんの前で止まり、尋ねた。


「んー・・・・・生徒会室とか保健室とかイロイロ。」


向日先輩は少し考えた後、そう答えた。


「俺、ずっと探していたんですよ。」


「そうらしいな。クラスの奴から聞いたぜ。」


「聞いたのなら、何故連絡をくれないんですか?電話もメールもしたのに・・・・・・」


「ワリィな。最初はちょっとからかうつもりだったんだけど、お前が一生懸命俺のこと探してるのが面白くてさ。つい、やめらんなくって。」


向日さんはアハハハと笑いながら、そう言った。


「なっ・・・・!!!」


「・・・・・・お前さ、絶対俺が居るところに来るんだもんな。だから、余計に面白かったんだよ。お前に見つからないように隠れるのは大変だったけどな。」


「・・・・そうですか。」


今日1日の疲れが一気に出てきたような気がする。


「んで、今日1日、俺の姿が見えなくてどう思った?寂しいって思った?」


下から覗き込むように見上げられ、俺は戸惑った。


「・・・・・・・一体何がしたいんだ、とか、誕生日なのに居ないのはどういうことだろう、とか、もう祝うのやめようか、とか思いましたよ。寂しいとかそんな感情は1ミリも沸きませんでした。」


少し意地悪いとは思ったが、ささやかな仕返しを試みた。


「あれ、お前怒ってんの?」


そう言って首を傾げる姿を愛しいと思った。


「・・・・少しは怒ってますけどね。」


「ふぅん。なぁ、今からお前ん家行って良い?」


様子を伺うように上目遣いのまま尋ねてくる。


「構いませんけど・・・・・」


「マジ?やった!!」


俺が頷くと、向日さんはとても嬉しそうに飛びついてきた。


「泊まってくからな。」


「はいはい、どうぞ。」


腕を組んでくる向日さんをとても可愛いと思う。


「あ、そうだ。忘れないうちに・・・・」


組んでいる腕を解き、向日さんの華奢な体を抱きしめた。


「・・・・ひよ?」


腕の中で顔を上げる向日さんの目をしっかりと見据える。


「誕生日、おめでとうございます。」


そう言って、軽く口付けた。


「・・・・・サンキュ。」


向日さんは耳まで赤くなって俯き、ボソッと呟いた。


「プレゼントは家で渡しますね。」


「・・・・おう。さー、早く帰るぞ!!!」


照れ隠しなのか、向日さんは張り切って歩き出した。


「そうですね、帰りましょう。」


そんな姿も可愛らしいと思いながら、俺は向日さんの後を追った。




*おわり*




+あとがき+


向日BD小説です。
内容が甘いのか何なのか微妙なところですが。。。
そして、まとまってなくてすいません。

翌朝の話→