Happy Birthday



+前編+



異常気象のせいなのか、まるで夏のような暑さになった5月5日。


「あ゙〜〜〜っ!!!暑ぃ!!!」


バッサバッサと団扇で顔を扇ぐ向日。
その隣には涼しい顔の日吉が座っていて、時々向日の汗をタオルで拭ったり、ドリンクを飲ませたりしていた。
何も知らない人が見れば、向日が日吉を下僕扱いしているように見えるだろう。
だが、実際はただのバカップルだった。
暑いのなら離れれば良いものを、二人は寄り添ったまま離れようとしない。


「・・・・・・こんな暑い中、よく寝れるよな、ジローの奴・・・」


向日がそう言って俺の隣で眠っているジローを見た。


「暑いことは暑いみたいだけどな」


いつもなら俺の膝枕で眠るジローが今日は俺から少し離れている。
くっついて寝るには、今日の気温は暑すぎるのだろう。


「それにしても、何で5月だってのに気温が30度近いんだよ・・・・」


「確かにな・・・・」


俺もそこに異議はないため同意した。


「てかよ、日吉が涼しげなのが腹立つ」


向日はそう言って日吉の頭を団扇で叩き始めた。


「・・・・・何ですか急に」


日吉は迷惑そうな顔をしつつも、振り払うことはしない。
甲斐甲斐しく世話を焼いてもらいながら何てわがままな奴なんだと思うが、口にしたら怒りで余計に暑さが増しそうだったのでやめておくことにした。


「それより、そろそろ準備を始めないか?」


「ん?あぁ・・・・・そうだな。侑士たちももう来るだろうし、始めるか」


俺たちは眠っているジローを起こさないよう、静かに部屋を出た。
階段で1階に降り、居間へ向かうと、俺の携帯が鳴った。


「はい」


『あ、か?忍足やけど』


買い出しに行っていた忍足からの電話だった。


「あぁ、もう終わったか?」


『おう。今お前ン家向かっとるところや』


「わかった。玄関の鍵開けてあるから、静かに入ってきてくれ。ジローが俺の部屋で寝てるから」


『ほな、後でな』


通話を切り、携帯をポケットにしまう。


「忍足たちが買い物終わったってさ」


「リョーカイ。日吉、準備するぞ」


「はい」


向日たちは居間の隅に置いてあった大きな紙袋から中身を出し始めた。
それは色紙で作ったわっかを連ねたもので、部屋の飾り付けに使うものだった。
居間の方は向日たちに任せ、俺は居間のエアコンを入れて台所へ移動した。
冷蔵庫から作り置きしておいた数々の料理を取り出し、別の皿へ盛り付け直した。
忍足たちが買ってくるであろう惣菜のためのスペースもあけておく。
人数分の取り皿と飲み物用のグラス、箸なども出したころ、玄関が静かに開く音がして、複数の足音が近づいてきた。


「お待ちどーさん」


忍足が両手に大きなビニール袋を提げて台所へ入ってきた。
その後ろに鳳と樺地もいる。
宍戸たちは居間の飾り付けを手伝い始めたようで、何やら言い合う声が聞こえた。


「アイツら何で揉めてんだ?」


「向日さんがピョンピョン飛び跳ねながら飾り付けをしていて、宍戸さんと跡部さんが注意しているみたいです」


鳳が困ったような顔で答えてくれた。


「・・・・・・鳳と樺地は向こうの手伝いをしてくれ。あと、アイツらに騒ぐなって言っておいてくれ」


「わかりました」


「ウス」


鳳と樺地が台所を出て行くのを見送っている間に、忍足はジュースやケーキを冷蔵庫にしまい終えていた。


。何か手伝うことある?」


滝が台所にやって来た。


「あぁ・・・・あとこれを盛り付けて運ぶだけだ」


忍足たちが買ってきた、サラダやサンドイッチなど、作り置きができないナマモノの数々を示して伝えると、滝は頷き、盛り付けを始めた。


さん、居間の方の飾りつけは終わりました」


盛り付けが終わるころに、鳳がそう伝えに来た。


「あぁ、サンキュ。これ運ぶの手伝ってくれ」


「はい」


忍足、滝、鳳、俺の四人で皿を居間へ運んだ。
すべての皿を運び終え、必要な食器類もテーブルに並べた。


「じゃあ、俺ジロー呼んでくるから、つまみ食いするなよ」


俺はそう言い置いて居間を後にした。




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+memo+

長くなったので分けます。