心の花
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「あーあ、行ってもうた・・・」
の背中を見送り、つれないなぁ、と思いつつテニスコートに戻った。
元々、休憩時間はあまりなかったから、戻るとすぐに練習が再開された。
「忍足!何グズグズしてやがんだ!さっさとコートに入れ!!」
跡部に怒鳴られて、俺はラケットを持ってコートに入った。
練習が終わり、部室には今、俺と跡部しかいない。
「・・・・・・はぁ。」
着替えを済ませ、日誌を書いている跡部を眺めた。
「さっきからウゼェんだよ、忍足。言いたいことあるならさっさと言え。」
跡部は日誌を書いている手を休め、俺を見た。
何だかんだ言いつつ、跡部はいつも、こうやって話に付き合ってくれる。
「・・・・あんなぁ、のことやねんけど・・・」
「・・・あぁ。」
跡部はやっぱりなと言うように、ため息を吐いた。
「最近な、が冷たいような気ぃすんねん。」
「・・・・・・倦怠期なんじゃねぇの?」
「まだ3ヶ月やで!?倦怠期もクソもあるかいな!!」
と抗議をしてみたは良いものの、俺もそんな気はしていたから、あまり強くは言えない。
「じゃあ、お前が何かやったんだろ。無理矢理を押し倒したとか、嫌がるをヤろうとしたとか・・・」
跡部が指折り数えながら言い連ねていく。
ていうか、それしか無いのか・・・・?
「そんなことせぇへん!!・・・キスもまともにできひんのに、セックスなんかできるわけないやんか。」
「・・・はぁ?お前ら、まだヤッてなかったのか?」
跡部は珍しく、ポカンと口を開けて固まった。
「まだしてへんよ。」
「・・・・よく耐えれたな、お前。付き合ってすぐヤッちまうお前が、にはまだ何もしてないとはな・・・・3ヶ月続いた時点で奇跡なのによ。」
跡部はフッと鼻で笑って、そう言った。
というか、こんなところで過去の話を持ち出さないで欲しい。
「せやかて、、怯えるんやもん。こう、二人っきりになるとするやろ?で、キスしよ思て近づくとな、ビクッてなるんや。は普通にしとるつもりみたいやけど、顔が泣きそうなんや・・・・そないな顔されたら、何や悪いことでもしとるような気ぃになんねや。お前も、神尾が怯えたら同じこと思うはずや。」
「その時は、たまたま気分じゃなかったとかじゃねぇの?」
「最初は俺もそう思ったんやけど・・・」
その先を言い淀んでいると、
「・・・つまり、毎回そうだということか?」
勘の良い跡部がそう言い、俺は無言で頷いた。
「・・・・・・嫌がってるわけじゃなさそうだけどな。奴も男だ。それなりの覚悟はとっくに出来てるだろうよ。・・・神尾の奴も毎回嫌がるが、ただの照れ隠しだしな。だから、もそんなとこだろ。」
跡部はしばし考えてから口を開いた。
「そうやろか・・・?」
自信たっぷりな跡部の言葉を聞いて、その通りのような気がした。
「あぁ。何だったら、今から行って確かめれば良いだろうが。・・・・あいつが泣きそうになっても続けられる度胸がお前にあればだけどな。」
「そ・・・・やな。よし、俺、今からんとこ行ってくるわ!おおきにな!」
俺はバッグを担いで部室を出た。
向かう先はの家。
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