第十話



家から徒歩十五分のところに、俺が通っていた道場はあった。


「ここって・・・・・空手道場?ちゃん空手やってるの?」


「幼稚園のころから通ってたけど、少し前に辞めた。親善試合のときは参加するけど、練習には参加していないんだ」


「へぇ〜・・・・」


物珍しそうに辺りを見渡すジローをつれて、道場の入り口を開けた。


「ちわー」


中ではそれぞれが形の練習をしたり組み手をしたりしていた。


「おう、。遅かったな」


「一旦家に帰って着替えてたから遅くなった」


「そうか。氷帝だっけ?お前の制服姿見たかったんだけどなぁ・・・・」


この道場の師範が近づいてきた。


「・・・・・・・俺の制服姿はもったいなくて見せてやんない」


この師範にあんな姿を見せたら、間違いなく馬鹿にされるだろう。
涙を流して大爆笑する姿が目に浮かぶ。


「つまんねぇなぁ・・・・ん?後ろにいる坊主は?」


「俺の友達。コイツ、空手はやらないから勧誘するなよ」


「何だ、みっちりしごいてやろうと思ったのに」


「残念でした。・・・・ジローは、この辺りに座ってて。このオッサンに話しかけられても返事するなよ」


「オッサンって・・・・相変わらず酷いな、は。もう少し優しくしてくれないか?」


「フン。自分の言動思い返してみろよ・・・・・着替えてくる」


俺は師範とジローをその場に残して、更衣室に向かった。


「あ、。久しぶり」


更衣室に入ると、よく見知った奴がいた。


「隆か・・・・久しぶり」


「元気そうだね」


「そっちこそ」


俺たちはすぐに空手着に着替えを済ませ、一緒に更衣室を出た。


は氷帝だったよね」


「うん。隆は青学だっけ?どう?そっちの学校は」


「テニス部に入ったんだけどね、良い奴ばかりだよ」


「・・・・・・テニス部?そうか・・・・」


青学も結構テニスが強かったはずだ。
いずれ練習試合とかで、青学が氷帝に訪れることもあるかもしれない。
そのとき、あの格好で遭遇したら恥ずかしすぎる。


「あそこにいる氷帝の制服着た奴もテニス部だぜ」


俺は入り口の近くのパイプ椅子に座っているジローを示した。


「え、そうなんだ。氷帝は今日練習ないの?俺は休ませてもらったんだけど・・・・」


「サボったみたいだぜ。俺と遊びたいんだとさ」


「へぇ・・・・相変わらずはモテモテなんだね」


「男にモテても嬉しくない」


「え?そんなつもりで言ったんじゃないよ。だったら女の子にも人気あるだろ?」


あの格好で女に人気があったら怖すぎる。
とはいえ、本当のところを話せないので曖昧に笑って誤魔化した。


「お前ら早くこっちに来い」


師範に呼ばれ、俺たちは急いで列に並んだ。



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+あとがき+

試合のシーンは飛ばします。
タカさん、空手辞めたのいつなんだろ・・・?