第十一話



親善試合が終わり、解散する頃には辺りはもう真っ暗だった。


「七時か・・・・」


腕時計で時間を確認すると、七時を回ったところだった。


「ジローは門限とかあるのか?」


「ううん、無いよ」


「じゃあ、家で飯食ってけよ」


「えっ、良いの?」


「あぁ。ウザい親父が帰ってきてるかもしんねぇけど、それで良ければ」


「全然良いよ!!やった〜!!」


小さな子どもみたいに両手を上げて喜ぶジローを連れて家に帰った。
玄関に明かりが灯っており、親父が帰ってきていることがわかった。


「親父が何かわけのわからんこと言ってきても無視して良いからな。相手にすればするほど図に乗ってウザいから」


念のためジローに忠告しておく。


「そうなの?わかった」


ジローは不思議そうに首を傾げたが、大きく頷いた。
俺はそんなジローを横目に見ながら、玄関のドアを開けた。


「ただいま」


「おかえり、・・・・・・ん?彼は?」


「同じクラスのジロー。俺が男だって知ってる」


ジローを紹介しながら靴を脱ぎ、家に上がる。


「こんばんはー。お邪魔します」


「・・・・・・何だ、もうバレたのか」


親父はジローと俺を交互に見ながら残念そうに呟いた。


「偶然な」


「他には?」


「・・・・・残念ながら他はいない。ジローは俺の写真見て気づいただけ。居間に卒業式の写真あっただろ」


「・・・・知り合って一週間で家に連れ込むなんてやらしーなーは。パパがいないお家で何しようとしてたんだ?」


親父はニヤニヤ笑ってそう言った。


「息子に女装させる変態に言われたかねぇよ。行くぞ、ジロー」


「うん」


俺達はダイニングに向かった。


「適当に座ってくれ。・・・・・・・カレーか」


台所の鍋の中身を確認しながら、ジローに椅子を勧めた。
今日は親父が作っておいてくれたらしい。


「あんな変人でも飯は美味いから、期待して良いぞ」


コンロの火を点け、冷蔵庫を開ける。
中には二人分のサラダが入っていたので、それを出して食卓に並べる。
一つはジローの前に置き、もう一つは俺の席に置いた。
皿に白飯を盛り、温めたカレーをかけて、サラダの隣に並べた。
スプーンと箸と水を運んで完成だ。


「いただきます」


「いっただきまーす」


俺達が手を合わせ、スプーンを持つのと、親父がダイニングに入ってきたのが同時だった。


「あれっ!?ちゃん、パパのサラダは?カレーも全然残ってないし」


親父は台所の鍋の中を覗きこんで泣き真似をした。


「知らん」


嘘泣きに腹が立ち、冷たく突き放す。


「酷い・・・・・・パパが作ったのに・・・・」


キーッと癇癪を起こすフリをし始めたため、俺は無視することにした。



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+あとがき+

入学前と今とで主人公のキャラが違ってきました・・・。
おかしいなぁ・・・(汗)