第十二話



「カレーおいしかった〜」


夕食後、一人寂しくカップ麺を食べている親父をダイニングに残し、俺たちは俺の部屋に向かった。
ジローは満足げに腹をさすっている。


「長い間作ってるだけあるよな。母さんが死んでからは親父がいつも作ってたけど、ハズレは無かったし」


「へぇ〜。じゃあ、ちゃんはご飯作らないの?」


「夕飯はたまに作ることもある。弁当は毎朝自分で作ってるけどな」


「え!あの綺麗なお弁当ちゃんの手作りなんだ!!」


「まあな・・・・あの学食には行きたくねぇんだ」


「学食のご飯おいしいよ?」


「いつも人が溢れてる上に、あの跡部の提供だし・・・・」


ちゃん、跡部のこと嫌いなの?」


「嫌いっていうか、あんまり関わり合いたくねぇ。俺、普段あの格好だろ?目立つようなことはしたくないんだよ」


「でも、ちゃん、男の子たちに人気だよ?もう十分目立ってるんじゃ・・・」


「は!?人気って何だよ?」


「だってちゃん、ずば抜けて可愛いもん。絶対一目惚れされてるよ。それに、この間女の子たちと揉めてたときも毅然としててかっこよかったC〜。あれ見てた男の子はみんなちゃんのこと好きになってたんじゃないかな?」


「マジかよ・・・・・うわーショックだ・・・」


「でも大丈夫なんじゃない?跡部がちゃんに話しかけてる間は他の男子は何もしてこないと思う」


「何で?」


「跡部を敵に回したら女の子たちに嫌われちゃうから」


「はあ?いや、そうじゃなくて・・・・」


ちゃんにちょっかい出す男子を跡部は許さないと思う」


「・・・・・・・・わけわかんねぇ・・・・」


ジローの言いたいことがよくわからない。
むしろわからない方が幸せかもしれないけれど・・・。


「でも、ちゃんのことは俺が一番好きなんだからね!!忘れないでよ」


「・・・・・・・・ソーデスカ・・・」


男に好かれても嬉しくないとは思うが、ジローの好意は何故かあまり嫌悪感がない。
それが何故なのか、自分でもよくわからなかった。


「テニス部には入ってくれないの?」


「嫌だ。部活なんかに縛られたくない」


「え〜・・・俺、ちゃんが来てくれたら毎日頑張っちゃうのに」


「・・・・・俺が行かなくても頑張ってくれよ・・・・」


テニス部なんかに入ったら休み時間や授業中だけでなく部活中まで跡部に付き纏われることになる。
そんなのは願い下げだ。


「ちぇっ・・・」


俺の思いが通じたのか、ジローは面白くなさそうに唇を尖らせたが、それ以上は何も言わなくなった。



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キャラたちとの関係をどういう風にするか悩み中です。