第十三話
「ちゃん、おはよー!!」 いつもどおりの時間に登校すると、昇降口でジローと遭遇した。 「おはよう、ジローくん」 ジローの後ろに向日と宍戸が立っていたため、俺は言葉遣いに気をつけた。 「宍戸くんと向日くんもおはよう」 ジローの後ろの二人にも声をかけると、 「お、おう。・・・・・おはよ」 宍戸は何故か少し焦ったように応え、頬を赤くした。 「おっす」 向日の方は普通の態度だ。 『絶対一目惚れされてる』 昨夜、ジローが言っていた言葉が頭を過ぎった。 まさかな・・・・と思い直し、三人の顔を見渡した。 「朝練だったの?」 「うん、そうだよ。ちゃん、教室一緒に行こ〜」 「良いよ」 「じゃあ、宍戸と向日、またね!」 靴を履き替えたジローは二人に手を振ると、俺の手を握った。 「ちょ・・・・何で!?」 焦る俺と呆然とする向日たちを尻目に、ジローはどんどん教室の方へ歩いていった。 「ジロー?」 「ヘヘッ、手ぇつないじゃった」 「ヘヘッ、じゃないだろ・・・・どうすんだよ、あの二人絶対、変に思ってる」 周りに聞こえないよう小さな声で抗議すると、ジローは満面の笑顔で振り向いた。 「だいじょーぶ」 「・・・・・その根拠は?」 「何となく?」 「意味わかんねぇよ・・・・」 何を言っても無駄な気がして、俺は諦めることにした。 だが、周りの視線が痛い。 「ジロー!!!テメェ何してやがる!!!」 教室へ着くと、跡部が物凄い剣幕で飛び出してきた。 「何ってちゃんと手つないでる」 「そんなもんは見りゃわかる!!!なんでテメェがと手つないでるのかって聞いてるんだ!!」 「仲良しだから。当たり前じゃん?」 ジローはきっと本当はかなり性格が悪い気がしてきた。 これは確実にわかっていて跡部を怒らせている。 「そ、そんなこと俺は認めない!!!」 ジローの言葉を聞いて、何を思ったのか、跡部が少しうろたえた。 「・・・・・・・早く教室入りたいんだけど」 これ以上大騒ぎをするようなら振り切ってやろうかと考えた。 「あ。ちゃんごめんね。教室入ろっか。跡部どいて。邪魔」 ジローがニッコリ笑って言うと、跡部は先ほどの動揺から抜け出せないらしく、あっさりと道を開けた。 第十二話← →第十四話 戻る +あとがき+ 跡部VSジロー。 この二人はきっとこれからも揉め続けるかと思います。 私の中でのジローは羊の皮をかぶった悪魔だったりします(笑) |