第十八話



次の休み時間、もう一度F組に行くと、向日は来ていなかった。
どうやらE組は次が移動教室の授業らしい。


「・・・・・・ほな、跡部に負けたらテニス部のマネージャーになるんか?」


「・・・・・負けたくないから頼みに来たんだよ・・・・・でも、向こうは首席入学してるから、相当頭良いはずだし、普通に勉強しただけじゃ、絶対敵わないと思って・・・・・」


「わかった。俺も出来る限り協力するわ」


「ありがとう!」


「せやけど、部活終わった後やなくて、昼休みとかじゃあかんの?テニス部、結構終わるの遅いし、暗くなったら危ないやろ?」


「それは大丈夫。だって・・・・・」


男だし、と続けそうになって、慌てて口をつぐんだ。


「だって?」


「・・・・・・ううん、何でもない」


「?」


「時間は気にしなくて良いよ。いざとなったら迎えを呼べば良いし」


「何や、専属の運転手でもおるんか?」


「まぁ・・・・・・そんなような人がいないでもない」


それは専属の運転手なんかではなく、親父のことである。
何だかんだ言って心配性の親父は、俺の帰りが遅いとマメに連絡をくれる。
まあ、暴漢に襲われたところで、返り討ちにしてやるだけのことだが、やっぱりあんな馬鹿野郎でも親なのだ。
いつも俺の事を心配してくれている。
だったら女装なんかさせんじゃねぇよ、と思うけれど。


「そうなんか・・・・」


「あと、昼休みも出来たらお願いしたいんだけど良い?」


「ああ、ええよ。空いていれば、やけど」


「もちろん。教えてもらうのは私なんだから、忍足くんの都合に合わせるよ」


「わかった。・・・・・・いつから始める?」


「今日からお願いしたいな」


「ええよ。ほな、今日は昼休みに図書室で待ち合わせよか。何の科目がええんや?」


「私、理数系がダメだから、それ中心で・・・・」


「了解。ほな、昼休みにな」


「うん、ありがとう。よろしくね」


俺は忍足に手を振り、A組の教室へ戻った。



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+あとがき+

これでまた主人公の敵は増えることに・・・本人は自分のせいだとは気づいていません(笑)