第十九話



昼休みになり、図書室へ行くため、教科書や筆箱、ノートを持って立ち上がると、ジローが近寄ってきた。


ちゃん、どこ行くの?」


「図書室」


「お昼は食べないの?」


「うん。少しでも長く勉強しないと・・・・・これ、食べて良いよ」


俺は鞄から弁当の包みを出し、ジローに差し出した。


「ホント!?やった〜!!」


「じゃあね」


「うん!ちゃん、頑張ってね」


ジローが満面の笑顔で手を振ってきたので、俺も手を振り返し、教室を後にした。




昼休みが始まったばかりということもあって、図書室の中は閑散としていた。
俺は出入口のドアが見える机に座り、忍足が来るまで、一人で勉強することにした。
しばらくすると、チラホラと図書室を利用する生徒が増えてきた。


さん、遅くなってごめんな」


忍足の声がして顔を上げると、忍足と向日と宍戸が立っていた。


「・・・・・岳人がどうしてもついて来る言うからつれて来たんや。さんの勉強の邪魔はせんように約束したから堪忍な」


二人きりじゃなかったことに少しガッカリした。


(・・・・ん?ガッカリ?何で?)


何故ガッカリする必要がある?
疑問に思ったが、今は勉強が先だ。
そのことに関しては、後日改めて考えることにした。


「宍戸くんも勉強を?」


「えっ?あ、ああ……赤点なんか取ったら跡部がうるさそうだし・・・・」


宍戸は答えながら顔を赤くした。
これも先日からの疑問だ。
やはり、ジローが言うように、俺は男共に惚れられているのだろうか・・・・・・まったく嬉しいとも思わないが。


「そっか・・・・・向日くんもそうなの?」


「おう。まあ、やっといて損はねぇっていうか・・・・」


向日は少しバツが悪そうにボソボソと言った。
何故かはよくわからない。


「ふぅん?頑張ろうね」


真面目に勉強をする気があるなら良いかと激励した。


「ほな、始めよか」


忍足が向かいの席に座ると、向日と宍戸も両隣に座った。


は何が苦手なんだ?」


「理数系がちょっと・・・・暗記とか文系は得意なんだけどね。あと、地理も苦手かな」


「ふーん・・・・」


向日の問いに答えると、向日は少しつまらなさそうに相槌を打った。


「数学からにしよか」


「あ、うん。お願いします」


数学は一応、方程式を覚えようと思うのだが、何故か頭に入らない。
どうやら俺は数字とは相性が悪いらしい。
化学は元素記号しか覚えられず、実験以外に興味が持てないし・・・・。
ゲームに関わるものはすぐ覚えられるのだけれど。


「ちょお待っとって」


そう言って忍足は一旦机から離れて、奥の本棚へ姿を消し、すぐに数冊の本を持って戻ってきた。
それは数学の問題集のようだった。
さすがは氷帝学園の図書室だ。
参考書の類も充実しているらしい。


「この問題集、俺のお勧めやねん。繰り返しやるとええよ」


「ありがとう」


俺は忍足から問題集を受け取った。
今授業で取り組んでいる内容と問題集のページを確認し、早速取り掛かることにした。



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+あとがき+

私が理数苦手なので、主人公にも苦手になってもらいました。
岳人と宍戸を出したのにあんまり意味がなくてすみません(汗)