第二十話



それから二週間、忍足や向日、宍戸と共に試験勉強を続けてきた。
こんなに勉強をしたのは初めてで、頭はパンク寸前だった。
試験前日の日曜日、さすがに自分の勉強をするべきじゃないのかと俺は忍足に言ったが、忍足は気にすることないと、俺のために時間を作ってくれた。
この日もいつもどおり四人で勉強をする約束をしていたが、向日と宍戸は少し遅れるということで、俺たちは二人で市立図書館に向かった。
今まで必ず向日か宍戸のどちらかがいたため、忍足と二人きりだと間が持たないように思う。
しかも下手に話を振ると俺の嘘まで露呈しそうで怖くなり、何も言えなくなっていた。


「あー・・・・やっぱり満員やな・・・・」


学習室へ向かうと、どこの学校も試験前なのか、ほぼ席は埋まっていた。
空いている席を探してみるがポツポツと一人分の席があるだけで四人で座れそうな机はなかった。


「どないしよか・・・・」


学習室がこうでは、閲覧席の方が空いているということもないだろう。


「ファミレスとかの方がええかもしれんな」


「そう、だね・・・・」


俺たちは図書館を後にした。
近くにファミレスかファストフード店がないか探していると、向日と宍戸の姿を見つけた。


「あの二人何やっとるんやろ?」


忍足が疑問に思うのも無理はない。
向日と宍戸は何故か細い路地の奥にいた。
たまたま目を向けなかったら絶対に気づかなかっただろう。
よく見れば二人だけではなく、高校生くらいの見知らぬ男が三人いた。
ただならぬ雰囲気を感じ、俺は無意識に路地へ足を踏み入れようとした。
すると、忍足が俺の肩を掴み、引き止めた。


「女の子が行ったらあかん。ちょおここで待っとって」


忍足は持っていたリュックを俺に押し付け、ゆっくりと路地へ入っていった。
向日と宍戸は目の前の恐怖に立ち竦むだけで、近づく忍足に気づかない。
高校生たちもまだ忍足に気づいていないようだ。


「・・・・・・黙って見てられるわけねーだろ・・・・」


俺は忍足のリュックと自分のトートバッグを路地の入り口の隅に置いた。
大人を呼ぼうという考えはまったくなく、路地へ足を踏み入れた。


「オニーサンら何やっとるん?」


忍足が静かに声をかけると、高校生たちは弾かれたように振り向き気色ばんだ。


「あぁ?またガキかよ」


「何でこういうことになっとるのか説明してもらえます?」


「はぁ?・・・・まぁ良い。コイツが俺の靴汚したんだよ。お前が代わりに慰謝料払ってくれても良いぜ?」


「う、嘘だ!!ただぶつかっただけじゃねーか!!」


宍戸がヒステリックに叫び、その隣で向日が何度も何度も頷いている。
あまりにもベタな言いがかりで呆れてしまう。


「コーコーセーにもなってそんなこと言ってて恥ずかしくないの?しかも、そのダッサイ靴、少し汚れたくらいがオシャレで良いんじゃない?」


忍足の後ろから声をかけると、向日、宍戸、忍足が振り向き目を見張った。






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続きます。