第三十六話



「うわぁ〜っ!!!ちゃんかわE〜!!!」


駅前に着くと、ジローと向日、宍戸、忍足が揃っていた。
滝はまだ来ていないようだ。


「どうしたの、それ?」


俺の正体を知っているのにジローは純粋にはしゃいでいる気がする。
他の三人に至ってはそれぞれ絶句しているようだ。


「ちょっとね・・・・・・」


どこからどう説明すべきかわからず、言葉を濁した。
息子にこんな格好をさせる親父は酔狂だと思うと同時に、これに付き合う俺も酔狂だと思う。


「みんな!遅くなってごめん!」


滝が走ってくる。
その後ろを跡部が怒りの形相で歩いている。


「あ、跡部・・・・・・」


「お前ら、俺様に黙ってを連れ出すとは良い度胸だな!!アーン?」


いやいや、俺は跡部の所有物じゃねぇよ。


「ごめん、どっかで聞いてたみたいで……さっき捕まっちゃった」


「あーあ……跡部が来るとちゃんが嫌がるから跡部がいないところで誘ったのに……」


ジローがボソリと言う。
そうだったのか、と思った。
道理で跡部の名前があがらないはずだ。


!遊園地に行きたいなら何故俺様に言わない!?遊園地くらいいつでも俺様が貸切にしてやる……」


跡部は言いながら俺を見て絶句した。


「貸切とかいらな……何?」


跡部と二人で貸切とかサムすぎる。
きっぱり断ろうと思ったが、それより跡部が俺を凝視しているのが気になる。


「何だ、俺様のためにめかし込んで来たのか?」


「断じて違う。むしろ逆」


跡部が来ないから、渋々でも着て来たのだ。
跡部が来るとわかっていたら、何があっても普通の格好をして来た。


「じゃあ、俺様がもっと良い服を買ってやる」


「いらない」


跡部の言う“良い服”というのはどうせ目玉が飛び出そうなほどバカ高い物に決まっている。
そんな高価な物を身につけたいとは思わないし、女物の服を無駄に増やすつもりもない。


「まあまあ、二人ともその辺にして、そろそろ電車乗らないと遊ぶ時間無くなっちゃうよ」


滝が仲裁に入り、俺たちは駅構内へと向かった。
電車内は割と空いていて、俺たちは全員座ることができた。
俺の隣はジローと跡部に陣取られていて、少々居心地が悪い。
跡部が電車に乗っているのが不思議で仕方が無く、思わずじっと見ていると、


「何だ、?ようやく俺様の魅力に気付いたのか?」


と言った。
よくもまあ、そう自分の都合の良いように解釈できるよな、と呆れてしまう。


「あ、次で降りるんじゃない?」


俺はわざと話を逸らした。
電車が駅に到着し、俺たちは揃って電車を降りた。




* * * * * * * * * *




「次あれ乗ろうぜ!」


向日が言う。


「いや、あっちはどうだ?」


宍戸が言う。


「そろそろ休憩せぇへん?」


忍足が言う。
遊園地に着くなり、向日と宍戸の誘導に従うままに絶叫マシン系を立て続けに乗らされていた。
忍足は平気そうな顔をしていたが、内心ではうんざりしていたようだ。
正直俺もそろそろ休憩したいと思っていた。
体力に自信はあるものの、こうも立て続けに激しい乗り物に乗っていてはさすがに気分が悪い。


「じゃあ、あの辺のベンチに座ろうよ。丁度日陰になってるし」


滝が示した木陰のベンチにみんなで移動する。


「ほな、何か冷たいモン買うてくるわ」


俺とジロー、跡部が座ると、忍足が言いだした。


「あ、じゃあ私も行く」


跡部の隣に座っているのが嫌でベンチから立ち上がると、


「俺一人で大丈夫やから、さんは座っとって」


忍足はにっこりと笑って手で制した。


「でも・・・・・・」


流石に七人分のジュースは一人では運べないだろうと思う。


「何がええ?」


「え・・・・・・じゃあ、レモンスカッシュ」


「了解。あとは?」


忍足が他の奴らを見渡す。


「俺、コーラ」


と、宍戸。


「「俺も!!」」


向日とジローがはもる。


「俺様はアイスコーヒー」


「滝は?」


「俺は見て決めようかな」


滝はそう言って、ベンチから離れた。


「そうか?ほな、行こか」


忍足と滝が遠くに見える売店に向かって歩き出した。


「今、何時?」


「もうすぐ十二時になるぜ」


「あー、じゃあ昼飯も頼めば良かったな」


「そうだな」


向日と宍戸が時計を見ながら話している。


「昼食なら俺様が用意しておいたぞ」


跡部がしたり顔で言った。


「はぁ?どういうことだよ?」


宍戸が訝しそうに聞くと、跡部がパチンと指を鳴らした。
すると、どこからともなくメイド姿の人や執事らしき人が現れて、俺たちの前の空間にテーブルをセッティングし始めた。



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樺地出すの忘れた・・・・・・ま、いっか。
まだ続きます。