第四十二話



ジローと二人で待ち合わせ場所に向かう。
途中、ジローが俺の手を握ってきたので、どうしようか迷った結果、握り返してみた。
そして、遊園地で忍足に手を握られたときとは全然違う心境に気付き、戸惑った。
あの時は本当に恥ずかしくて、顔中熱くなったし、思い切り動揺してしまったのに、今は全く平気だった。
平気なのはジローだから?
じゃあ、あのときは……忍足だったから?
考えれば考えるほどわからなくなる。
だって、これでは、まるで俺が忍足に……
そこまで考えて、思考が停止する。
これ以上考えたら、気付いていはいけないことに気付いてしまう。
いや……これではもう気付いているも同然だ。
だが、ここはあえて気付かないふりをする。
そうしなければ、脳みそがパンクしてしまうから。


ちゃん、向日たちいたよ」


ジローの呑気な声が聞こえてハッとする。
いつの間にか学校近くの商店街までやって来ていた。
そこには向日、宍戸、忍足、滝の四人がいた。


「おい!!ジロー!!何でと手つないでんだよ!?」


向日に怒鳴られ、手をつないだままだったことを思い出す。
その声につられて、向日の後ろで滝と話していた忍足が顔をあげ、俺は慌ててジローの手を離した。


さん、その浴衣可愛いね」


滝がそう言ってにっこりと微笑んだ。


「あ、ありがとう……」


何となく気まずい思いをしながら礼を言う。
忍足はチラッとこちらを見ただけで、特に何かを言う様子は無い。
そんな様子に少しだけ胸が痛んだ。


(ホント、俺、どうしたんだよ……)


「それじゃ、早く場所取りに行こう」


滝に促され、俺たちは花火大会の会場へ向かった。



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