第四十三話



会場では割と良い位置を取ることができ、滝が用意していたレジャーシートを広げ、真夏の日差しの中、部活のことや学校のこと、宿題のことなど他愛もない話をして時間をつぶした。
時々、滝や忍足が俺を気遣って、コンビニなど涼しい場所へと連れ出してくれ、何とも言えない複雑な心境だったが、暑いところにずっといなくて済むというのはありがたかった。
日が暮れ、花火が始まる前に食料を調達するため、じゃんけんで買い出し係を決めた。
買い出し係は忍足と向日、宍戸の三人で、残った俺と滝とジローは欲しい物を彼らに告げた。
しばらくして、花火が上がる寸前に忍足たちが戻って来た。


「お待ちどうさん。もうえらい混んどって、全然買われへんかった」


三人は若干疲れた表情で、買ってきた物をレジャーシートの上に並べた。


「はい、さん」


忍足から割り箸とコンビニで買ったらしいウェットティッシュを手渡され、気がきくなぁと感心すると同時に胸がキュンとなった。


(何、ときめいてんだよ、俺)


「……ありがとう」


内心突っ込みを入れつつ、素知らぬ顔で受け取った。
そして、全員に割り箸が配られ、さぁ食べるぞという時、ドーンと大きな音が響き渡った。


「お、始まった!!」


向日が楽しそうに言って空を見上げた。
俺も同じように見上げると、空一面に色とりどりの花が咲き乱れ、つい食事をとるのも忘れて見とれてしまった。


「キレーだねぇ、ちゃん」


隣に座るジローがうっとりと呟く。


「うん」


頷きながらたこ焼きを口に入れた。



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+あとがき+

花火大会、これで終わりです。