第四十五話



「やめんか、幸村!!」


真田が怒鳴り、俺から精市を引き剥がした。


「いくらイトコとはいえ、女性に暴力をふるうのは俺が許さん」


(………はぃ?)


真田の言葉に俺だけでなく、精市もポカンとした。
そして、精市が思い切り吹き出す。


「あはははははははっ!」


腹を抱えて笑い出す精市を、今度は真田がポカンとして見つめる。


「まぁ、いいや。には後で話を聞くことにするよ」


ひとしきり笑ったあと、精市は目じりの涙をぬぐってそう言った。


(涙が出るほど笑うんじゃねぇよ)


精市が爆笑したせいで、女じゃないと否定するタイミングを逃してしまった。


「……それじゃ、俺たちはもう行くよ」


精市がにっこり笑って言うと、二人は無言でうなずいた。
二人の前を離れると、精市はふふ、と小さく笑った。


「何だよ」


「真田のあの顔、見た?本気でを女の子だと思ってたよね」


「……俺、普段着のときに女に間違われたの初めてだけど」


もっと幼い頃にはよくあったが、小学校高学年になってから、女だと思われたことはなかったと思う。
と、そこまで考えて、ふと思う。
そういえば、体操服やジャージは男女兼用だし、スカートではないため、外見は普段着のときとかわらないはずだ。
だが、同級生たちは俺を女だと信じて疑っていないようだった。
となると、やっぱり母さんそっくりの女顔であることや普段は女物の制服を身につけていることが目くらましとなっている可能性が高い。


「黙り込んでどうしたんだい?」


「別に……」


何とも言えない複雑な心境になり、ひっそりとため息をついた。



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+あとがき+

真田は主人公に一目ぼれ。