第五十話
九月も終わりに近づいたある日の朝、朝練のためにテニスコートへ行くと、既に向日と宍戸がいた。 「あ、だ。おはよ」 向日が俺に気付き、手を振ってくる。 「おはよ」 その隣にいた宍戸もこちらを見た。 「おはよう、向日くん、宍戸くん。……ジローくんは?」 二人と一緒にいることが多いジローの姿がない。 「アイツは寝坊だ」 宍戸が答える。 「へぇ……」 残暑が厳しいとはいえ、七月や八月に比べると、大分過ごしやすくなったためか、ジローが寝坊する回数が増えていった。 まぁ、今までも寝坊しなくても練習をまともにやらずに寝てばかりいることの方が多かったから大して変化は無いけれど。 「なぁ、」 向日が妙に畏まった表情で俺を呼んだ。 「何?」 「お前のこと、って呼んでも良いか?」 「え?うん」 いきなり何を言い出すのかと思ったら、そんなことか。 「じゃ、じゃあ、俺のことも岳人って呼んでくれねぇ?」 向日は何やら嬉しそうだ。 「良いよ。これからは岳人くんって呼ぶ」 「呼び捨てで良いぜ」 「そう?じゃあそうする」 正直呼び捨てで呼ばせてもらう方がありがたいから、一も二もなく了承した。 「俺も……って呼んで良いか?」 宍戸にも聞かれ、断る理由もないから頷く。 「良いよ」 「俺のことも下の名前で呼び捨てで良いからな」 「わかった」 こうして俺たちはお互いに下の名前で呼ぶことになった。 第四十九話← →第五十一話 戻る +あとがき+ そう言えばずっと苗字だったなぁと思ったので名前呼びに変えさせてみました。 ただそれだけです。 |