第六十一話



ステージ上でカメラクラブの部員に写真を何枚か撮られた後、ステージを降りると、あっという間に男たちに囲まれた。
跡部と忍足は女たちに囲まれていたが、二人は女たちを綺麗に無視して俺の所へとやって来て、俺を男たちからかばうように両サイドに立った。
実行委員たちも俺たちの周りから人を押しのけてくれて、何とかもみくちゃにされずに済む。


ちゃーん!!こっちこっち!!」


人混みを抜けると、校舎のすぐそばにいたジローに呼ばれ、俺たちはそちらに向かった。
ジローの横には岳人と亮、それに父さんと榊もいた。


、すっげぇ綺麗だぜ」


岳人が顔を真っ赤にしながら言った。
その隣で亮も顔を赤くしている。


「ありがとう」


半ば自棄になって微笑むと、


……」


父さんは今にも泣きそうな顔をして見つめてきた。


(気持ち悪ぃな……何なんだ……)


「まだ俺だけのものでいてくれ!!」


父さんはそう言って俺を抱きしめる。


(このクソ親父!!俺が反抗できないからって調子に乗りやがって!!)


「アーン?そのオッサンは誰だ?」


跡部が父さんを見て眉をひそめる。


ちゃんのお父さんだよ」


俺が口を開く前にジローが答えた。


「……の?それは失礼しました」


跡部はいつになく礼儀正しく頭を下げた。


「跡部景吾と申します。以後お見知りおきを」


「ふーん……そっちの彼は?」


父さんはすぐに跡部から興味を失って、じっとりとした眼差しで忍足を見た。


「ええと、忍足侑士です……」


忍足が少し面食らった様子で答えると、父さんの目がキラリと光った。


、彼があのヘアピ……」


「ああぁぁぁぁっ!!!!!ちょ、ちょっと待って!!」


俺は慌てて父さんを引きはがし、その口を手で塞いだ。
跡部たちがビックリした顔で俺を見ている。


「何だ、?」


「な、何でもない。気にしないで。余計なこと言わないでよ……パパ」


最後に小さく付け足すと、父さんは満面の笑みになって頷いた。


(信じらんねぇ……)


というか、ヘアピンの送り主に気づかれたことに驚いた。
誕生日につけたまま帰ったから誰かにもらったということくらいは知っていただろうが、まさか忍足からだと気づくとは……親というものは恐ろしい。


せんぱーい!!」


昨日知り合ったばかりの鳳と日吉、それから樺地の三人が駆け寄ってきた。


「こんにちは。先輩、優勝おめでとうございます。そのドレス、とっても素敵です!!」


鳳が満面の笑みで言った。
彼らもミスター・ミスコンテストを見ていたようだ。


「……ありがとう」


礼を言っていると、人混みの向こうから滝がやって来た。


さん、跡部、忍足、優勝おめでとう。やっぱりさんに出てもらって正解だったよ。すごい盛り上がったから」


「……ありがとう」


「あ、よかったら、みんなで写真撮らない?」


滝がそう言ってデジカメを取り出した。


「良いね!!みんなで撮ろう」


ジローが賛成し、他のみんなも同意する。


「それなら私がシャッターを押そう」


榊が名乗りを上げ、滝からデジカメを受け取った。
他のメンバーは携帯を出し、榊に預けている。


「まずは生徒たちだけで撮るから、はこっちに来い」


「はいはい」


榊の言葉に従って、父さんが俺から離れる。
校舎をバックにして俺たちはフレームに収まるよう並んだ。
真ん中が俺、両サイドに跡部と忍足、その後ろで俺たちを囲むように、樺地、鳳、日吉、ジロー、岳人、亮、滝が並んだ形になった。


「撮るぞ。三、二、一……」


ピピッとデジカメのシャッターが切られる。
その後も携帯で撮り続け、写るメンバーが何度も入れ替わり、最後に父さんと俺のツーショットを撮って撮影は終わった。



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+あとがき+

文化祭はこれで終わりです。
やっと終わった(笑)
写真の並び順は

 鳳日ジ岳宍
樺 跡主忍 滝

という風で、樺地と滝が前列にいる主人公たちの半歩後ろにいる感じです。