第六十五話
期末テストが無事終わると、クラス中どころか学校全体が解放感に満ち溢れていた。 あと数週間もすれば冬休みになり、クリスマスという一大イベントが待ち構えているため、皆が浮き足立っているのだ。 かくいう俺もその一人だが、俺にとってはクリスマスより、忍足との約束の方が重大なことだった。 誰かに知られるわけにはいかないのでばれないよう細心の注意を払っているが、心のどこかでこの喜びを誰かに聞いてもらいたがっている。 「ちゃん?」 不意に横合いからジローに呼ばれてハッとする。 「ボーっとして、どうしたの?」 「何でもない。大丈夫だ……よ」 反射的に素で答えてしまい、自分たちが教室の中にいることに気付いて咄嗟に取り繕った。 少しぎこちない答え方になってしまったが、ジローは気にした様子もなく、そう?と首を傾げる。 「それで?」 話しかけてきた理由を問う。 「今度のクリスマスパーティーでプレゼント交換をするから何か用意するようにって滝が言ってて、ちゃんはもう聞いてるのかなと思って」 「プレゼント交換?聞いてないけど……」 「パーティーの時にくじ引きで当たったものがもらえるんだって」 「へぇ……」 それはくじの結果次第では自分が用意したものが当たる可能性があるということだろうか? まぁ、そこは滝のことだから何か考えているだろう。 「わかった」 それぞれが何を用意したのかわからないようにしておかないといけないだろうから、プレゼントを買いに行くときは一人で行くしかない。 幸い、今日は部活が休みなので、放課後、買い物へ行くことに決めた。 * * * * * 近頃よくお世話になっている(?)駅前の大型ショッピングセンターへ行き、以前、忍足の誕生日プレゼントを買った雑貨屋を探した。 「あ、あった」 専門店街を歩いていると目当ての店は難なく見つかり、クリスマスカラーに彩られた店内へ足を踏み入れた。 クリスマス前ということもあってか店内は大賑わいで、そこかしこに女子が溢れていた。 「…………」 一瞬、回れ右をして帰りたい衝動に駆られたが、何とか堪えて店内の商品を見渡した。 忍足の誕生日プレゼントを選んだときはほとんど直感でブックマーカーに決めたが、誰の手に渡るかわからないプレゼントでは、何を選んだらいいのかがわからない。 周りの女子の様子をさりげなく観察しながら、最終的にてのひらサイズのマグカップに決めた。 モノトーンのストライプ柄なので、これなら誰の手に渡っても違和感はないだろうと思っう。 「……あとは……」 受け取ってもらえるかわからないが、忍足へのクリスマスプレゼントも何か用意しようと決めた。 第六十四話← →第六十六話 戻る +あとがき+ クリスマス編開始。 |