第六十六話
「うっ……何これ?」 クリスマスまであと一週間を切ったある日の放課後、部室へ行くとあまりのまばゆさに目がくらんだ。 部室の片隅に巨大なクリスマスツリーが佇み、ツリーや室内のあちこちに無数につけられた電飾のせいでとてつもなく眩しかったのだ。 「うわぁ!!スッゲェ!!!」 後から入ってきた岳人がはしゃぐ。 「スゲェな……」 感心したように静かに呟く亮も興奮しているのか頬が上気していた。 「今朝の朝練の時にはなかったよね?いつの間に……」 滝も今初めて知ったようで、茫然とツリーを見上げている。 「もしかして、これ……」 滝が何か思い当たったらしく、ぽつりと呟いた。 こんな派手なことをするのはただ一人しかいない。 「フハハハハハハッ!!どうだ、!!」 更衣室のドアがバンッと開かれ、跡部が姿を現した。 「やっぱり……」 想像通りだった。 「……電飾が多すぎて目がおかしくなる」 正直なところ、壁に電飾なんかつけなくてもいいのではないかと思う。 「そうか」 跡部が指をパチリと鳴らすと、どこからともなく現れた黒服の男たちが半分以上の電飾をはずして去っていった。 ようやく普通に目を開けていられるようになり、改めてツリーを見上げた。 さっきはあまりの眩しさに気付かなかったが、プラスチック製のツリーではなく生木で、木のいい香りがする。 「これ、もみの木?」 「そうだ」 跡部が得意げにうなずく。 「本物のもみの木、初めて見た」 「俺も初めて見た!!」 いつの間に隣に来たのか岳人が嬉しそうにツリーを見上げて俺に同意した。 「クリスマスパーティー楽しみだな、!!」 岳人に笑顔を向けられ、俺はうなずいた。 第六十五話← →第六十七話 戻る +あとがき+ イギリスのクリスマスってすごいらしいですね。 跡部がイギリス育ちなので意識してみましたが限界です; |